スペイン代表の新監督はL・エンリケ! 首都メディアの意向を無視した今回の決定は、吉と出るのか凶と出るのか

2018年07月10日 山本美智子

「バルサカラー」の強い指揮官の就任には賛否の声が。

バルサカラーの強いL・エンリケの招聘には、アンチ・マドリーの連盟会長、ルビアレスの意向が強く含まれているようだ。(C)Getty Images

 2002年の日韓ワールドカップ開幕前、スペイン代表監督のホセ・アントニオ・カマーチョは、ベンチ要員としてベテランのルイス・エンリケを最終登録メンバーに選んだ。

 そして日韓ワールドカップの開幕を数日後に控えたある日、正GKのサンチャゴ・カニサレスが割れた香水の瓶で足を負傷し、登録メンバーから外れるという出来事があった。

 守護神の突然の離脱に、選手もスタッフもだれもがショックを受けていたなか、鼻歌を歌い、チームの空気をいち早く明るくしてみせたのが、当時のL・エンリケだった。
 
 あれから16年――。スペイン・サッカー連盟は、ロシアから早すぎる帰国を強いられたスペイン代表の新監督に、そのL・エンリケを選んだ。契約期間は2年。2020年のユーロ本大会までとなる。

 スペイン代表選手として62回の出場記録を持ち(得点は12)、バルセロナのトップチームを率いた2014-2015シーズンからの3年間では、獲得可能な13タイトルのうちの9タイトルを制覇。2015年にはFIFA最優秀監督賞を受賞するなど、その経歴は申し分ない。

 また彼は、選手時代にレアル・マドリーからバルサへの移籍を果たし、その2年後にはバルサのキャプテンを務めた強烈なキャラクターの持ち主で、スペイン国内においては敬意と憎悪を掻き立てる人物でもある。

 サッカー連盟のルイス・ルビアレス会長は、連盟内において「全員一致」で選ばれたL・エンリケ以外の選択肢は考えずに交渉にあたったというが、ファンやメディアの反応は賛否両論といったところだ。

 連盟のルビアレス会長も、そうしたさまざまな反応があることを知ってか、「L・エンリケは個性が強いし、彼がメディアとかつて問題があったことも知っている。だが彼は、代表チームを勝たせるためにやって来る」とコメントしている。

 もっとも当の本人は、周囲の声などどこ吹く風で、どこまでもみずからの信念に忠実だ。バルサを率いた当時でも、必要とあればリオネル・メッシさえベンチに座らせたその有無を言わせないキャラクターは、おそらく代表監督になっても不変だろう。

 伝統的にスペイン代表の監督は、首都マドリードのメディア主導で決めてきた経緯があるが、彼らの意向を無視し、「バルサカラー」の強い指揮官を選ぶという今回の決断を下したルビアレス会長の賭けは、はたして吉と出るのか凶と出るのか。

 L・エンリケを指揮官に迎えた新生スペイン代表のデビュー戦は、UEFAが今年9月からスタートする代表レベルの新コンペティション「UEFAネーションズリーグ」の初戦、イングランド戦(9月8日)となる予定だ。

文●山本美智子(フリーランス)
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