「ケインを止める自信がある!」クロアチア代表指揮官はなぜそう言い切れるのか【ロシアW杯】

2018年07月10日 サッカーダイジェストWeb編集部

チーム守備の“弱み”を“強み”に変えて

クロアチア代表を20年ぶりの世界4強に導いた智将ダリッチ。準決勝のイングランド戦にも秘策あり!? (C)Getty Images

 クロアチア国内での支持が急上昇中で、もはや神格化されそうな勢いだ。代表チームを率いる51歳の指揮官、ズラトコ・ダリッチである。
 
 今予選・最終節を前にアンチ・チャチッチ前監督からポストを引き継ぐと、アウェーでのウクライナ戦を2-0でモノにしてグループ2位に滑り込む。続くギリシャとのプレーオフも1勝1分けで制して、敗退の危機に陥っていたチームを救ってみせた。守備的MFだった選手時代はパッとせず、クロアチア代表歴はない。監督としても国内の中堅クラブを指揮したのちは、中東のクラブを渡り歩いてきた。世界的に見ればほぼ無名に近い存在だったのだ。
 
 それでも、クロアチア・サッカー協会のダボル・シュケル会長の目利きは確かだった。かつてU-21代表のコーチを務めていたダリッチの戦術家としての才に惚れ込み、ヴァトレニ(炎。代表チームの愛称)の命運を託したのである。個性豊かな攻守のタレントを見事にまとめ上げ、自身はクールに振る舞い、右腕に指名した元代表FWのイビチャ・オリッチが選手たちの兄貴分のように接して、モチベーションを喚起していく。この二人三脚も絶妙だと称賛されている。


 
 洗練された攻撃的スタイルがクロアチア・サッカーの代名詞ながら、ダリッチが本領を発揮したのはディフェンスの再構築だ。予選時に脆弱性が否めなかったこの"弱み"を、チーム全体の守備意識と連動性を高めることで"強み"に変えてしまった。準々決勝までの5試合で失点はわずかに4。これが強力なカウンターアタックを引き出している。
 
 アルゼンチン、ナイジェリア、アイスランド、デンマーク、そしてロシアを撃破してきたクロアチア。ダリッチ監督はイングランド戦を前に母国メディアから「ヴァトレニはハリー・ケインを止められるのか?」と問われ、微笑を浮かべながらこう答えている。
 
「止められない理由がない。我々がどんなチームと対戦し、ディフェンス面で結果を出してきたかを見れば、明らかだろう。ケインは素晴らしい。世界最高のストライカーのひとりだ。でも、我々のディフェンス陣は彼に仕事をさせないよ」
 

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