【指揮官コラム】三浦泰年の『情熱地泰』|鹿児島の露天風呂で実感するW杯の偉大さ

2018年07月08日 サッカーダイジェストWeb編集部

市民との距離を縮めてくれる大迫は偉大な存在!?

コロンビアとの初戦で日本に貴重な決勝点をもたらした鹿児島出身の大迫。地元の人々にとって彼の活躍は大きな誇りだ。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

 日本のロシア・ワールドカップが終わった。
 
 そしてベスト8が揃い、ワールドカップはここからが本番である。


 昨夜、ウルグアイ対フランス、ブラジル対ベルギーをテレビで観戦したが見応えのある2試合だった。そして、僕にとっては第二の故郷であり、18の時に留学した思い入れのあるブラジルのワールドカップもここで終わった。
 
 現地でワールドカップを肌で感じ取れた人は、「サッカー人」として大きな成長につながったであろう。もちろん一番は「日本代表」のゲームで経験したすべての人たちだ。
 
 選手だけではなく、そこに携わるすべての人だ。
 
 日本代表を現地で応援した日本国民は、ワールドカップを純粋に楽しみに行った人々も含め、行けなかった人の何倍もの価値ある時間になったことであろう。
 
 それはサッカー界だけではなく、その人たちの歩む人生にとっても大きな糧となり、お金には変えられない物になる。
 
 サッカー界、サッカーに携わる人間にとっては、現地の土を踏めた人とそうでない人との差は大きく開いたと言っても決して大げさではない。ロシアの空気、そこに流れる熱気はサッカーを愛する人のモチベーションをより高める物なのである。
 
 残念ながらJ3リーグはシーズンが止まらず、リーグ戦が続行されるため現地にはいけない。それでも何かを感じ取りたいと思う。それにはTVのハイライトや番組の宣伝で知識を増やすのではなく、試合をしっかり見る必要がある。
 
 そして現地を感じるには、現地に行った、もしくは居る人間と直接、生の声を聞きながら、ロシアを知る方が良いであろう。その差を少しでも埋められればと思う。
 
 が、やはり直接、行って帰ってきた人のほうが、声の通りも肌の艶も、またサッカーへの心も、行く前と比べて何倍もパワーアップしているのであろう。
 
 ひとつ、鹿児島での出来事を紹介したいと思う。
 
 大会前のパブリックビューイング(ガーナ戦)では、イマイチ盛り上がり方を知らない感はあったが、先日、レストランでよく会う常連のお客さんにワールドカップの大迫の得点について聞かれた。
 
 コロンビア戦の大迫選手のヘディングシュートは狙っていたのか、という素朴な疑問だ。
 
 あの微妙な位置に意図的に狙ったゴールか? もちろん、本人に聞かなくては分からないが、彼の感覚ではあると思う。
 
 当然、ゴールを狙ってはいるだろうが、あのギリギリの場所を狙ったのか? となると、そこは彼の持つセンスと感性、感覚によって生まれたゴールというべきであろう。
 
 つまり、あれは教えることの出来ないプレーなのだ。あの瞬間をどうコーチが教えるのだろうか。首の振り方、横、縦へどのくらいの強さで。相手選手との空間間隔など、二度と同じシチュエーションがないサッカーで教えられるものとは、基本技術くらいであろう。
 
 あの瞬間は、彼が頭に当てるというセンス。当て感の良さなのである。
 
 そして、鹿児島の誇り、シンボル(象徴)、少年の憧れとなる大迫の存在は、一般の市民と我々の距離を縮めてくれる、偉大な存在になっているのである。

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