【番記者通信】ベンゼマへの確信|R・マドリー

2014年03月03日 パブロ・ポロ

「イグアインを売ったのは、お前が大きくなるのを期待してだ」。

25節までに14ゴールを挙げ、昨シーズンの11ゴールをすでに上回ったベンゼマ。指揮官の信頼に応え、ついに覚醒した。 (C) Getty Images

 私は確信した。カリム・ベンゼマにだ。いま彼は、2009年夏の入団以来、最高のプレーを見せている。サンチャゴ・ベルナベウの観客が、貴賓席のお偉いさんが、このフランス人を批判していた時も、カルロ・アンチェロッティ監督だけは信頼を示した。指揮官のその気持ちに、いわば応えたわけだ。

 大きな役割を果たしたのは、ジネディーヌ・ジダンだ。アシスタントコーチに就任した昨夏、同胞の後輩にこんな声をかけた。
「クラブはイグアインを売った。お前がひと回り大きくなることを期待してるんだ」

 開幕からしばらくは、しかし、鳴かず飛ばずのままだった。批評家の多くが相変わらず辛辣で、「ベンゼマを売って、セルヒオ・アグエロかラダメル・ファルカオを取るべきだった」と口を揃えた。
 それでもアンチェロッティは、批判に耳を貸さず、ベンゼマをピッチに送りつづけた。そして年が明けると、フランス代表の26歳はついに覚醒するのだ。

 14年に入ってから、レアル・マドリーでもっとも多くのゴールを決めているのがベンゼマだ。リーガ・エスパニョーラ、チャンピオンズ・リーグ、国王杯で合わせて9ゴール。レッドカードのサスペンションでクリスチアーノ・ロナウドが欠場したリーガ24~25節でも、ベンゼマがもっとも多くネットを揺らしている。

 そんなベンゼマにクラブは契約延長を決めたようだ。現行契約の満了は15年6月で、契約更新か今夏の移籍かという2つの選択肢が考えられたが、クラブと本人が選んだのは前者だった。

 ゴールという結果を出したベンゼマは、ベルナベウで長くプレーしたいとそう願っている。アグエロやファルカオを、クラブが改めて獲得する可能性がある。しかし、陰に回って組み立て役となり、ゴールをお膳立てしてロナウドを引き立てることもできるのが、ベンゼマだ。そうした利他的なプレーができるFWは限られる。

 アンチェロッティはもちろん、ベンゼマの残留を願っている。最前線で両ウイングを活かす働きができるベンゼマは、戦術上重要なキーマンだからだ。敵2ライン(MFとDF)間でタメを作れるのは、ロナウドでもガレス・ベイルでも、ヘセ・ロドリゲスでもない。この3人が脚光を浴びているのは確かだ。忘れてはならないのは、その陰で働くFWがいるというその事実だ。


【記者】
Pablo POLO|MARCA
パブロ・ポロ/マルカ
スペイン最大のスポーツ紙『マルカ』でレアル・マドリー番を務める敏腕記者。フランス語を操り、フランスやアフリカ系の選手とも親密な関係を築いている。アトレティコ番の経験もあり、首都の2大クラブに明るい。

【翻訳】
豊福晋
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