J1後半戦へのビジョン|柏編|主力2名の退団も、アタックの再構築で巻き返しへ

2014年06月29日 鈴木潤

Kリーグ4位の全南に完勝するなど、攻撃力アップの兆し。

L・ドミンゲス、田中の離脱は痛いが、韓国キャンプでは課題の攻撃に手応えを得ている。(C) SOCCER DIGEST

 約2週間に渡る韓国キャンプ終えたばかりの柏に、システム変更や選手のコンバートといった新たな取り組みは見られなかった。今回のキャンプで柏が重きを置いたのは、攻撃力の向上である。序盤戦では勝ち切れない試合が多く、14節までに喫した3敗のうち、2つは引いた相手を攻略できなかった敗戦だ。J1再開後の巻き返しへ、攻撃の再構築は大きなテーマだった。
 
「チームとしてどう攻撃を仕掛けて、いかに相手の裏を取るか」
 キャンプ中の選手は口々にそう話した。実際に、ネルシーニョ監督は攻撃をクローズアップしたトレーニングで選手に意識付けを行なっている。ボランチを起点にビルドアップをしながら、前線の3枚と両ウイングバックが絡んで裏を狙うといった練習メニューを組み、攻撃パターンの構築を目指した。
 
 また、3バックも連動して攻撃に厚みをもたらす意識を持ち、ボランチから展開できなかった場合には、彼らが供給源としてパスを散らすなど、前半戦で浮き彫りになった課題をチーム全体で修正していくという姿勢が見られている。
 
 前半戦の戦い方を変えず、さらに突き詰めて精度を上げていくという狙いの中で、唯一の変化といえば、突如決まった田中順也のスポルティング・リスボンへの移籍である。6月26日まで柏の練習に参加していた田中は、27日にチームを離れ、ポルトガルへ渡った。移籍はこのまま成立するだろう。
 
 田中の移籍が実現した場合、前線3枚のうちひとつの枠が空くことになる。もちろん新戦力が加わる可能性は十分にあるが、現時点で後釜を狙い、猛アピールを続けているのが狩野健太と木村裕だ。
 とりわけ狩野は好調そのもの。今回のキャンプに臨むにあたり、「とにかく楽しんでやろうと思った」と話していたとおり、持ち前のテクニックとアイデアを駆使して攻撃にバリエーションをもたらすプレーは、たしかにサッカーを楽しんでいるように映った。24日の全南ドラゴンズとの練習試合では1得点・1アシスト、27日の建国大戦では逆転ゴールをFKから直接決め、存在を大いにアピールしていた。
 
 一方の木村も、全南戦では1得点を挙げて好調ぶりを示した。建国大戦は得点こそなかったものの、強烈なミドルシュートをはじめ何本もシュートを放ち、「自分はFWなので、多少強引でも積極的にシュートを打っていこうと心境が変わってきた」とポジション獲りに意欲十分だ。
 
 レアンドロ・ドミンゲスに続き、田中を手放す柏にとって、狩野と木村の発奮は後半戦に向けての好材料になるのは間違いない。前述の練習試合では、現在Kリーグで4位の全南に3-0と完勝し、キャンプ終盤の疲労蓄積で足取りの重かった建国大戦は苦戦を強いられながらも2-1で逆転勝利を収めるなど、韓国キャンプの取り組みは結果となって表われている。
 
取材・文:鈴木 潤(フリージャーナリスト)
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