【橋本英郎】唸らされた長谷部の“位置取り”。セネガル戦の戦略の肝だった

2018年06月27日 橋本英郎

ベースがあったから、慌てることはなかった

日本の中盤を牛耳り、セネガルに主導権を渡さなかった長谷部。ツボを押さえたいぶし銀の動きが光った。(C)Getty Images

 ワールドカップ、すごい盛り上がりですね。想像を超えるレベルです。
 
 火曜日に行なわれた日本とセネガルの一戦ですが、正直に言って勝てるとは思っていませんでした。ところがどうでしょう。結果的に引き分けに終わったものの、勝てましたよね、明らかに。大きな期待を感じさせる内容でした。
 
 今回はそのセネガル戦を分析しようと思います。ポイントを絞って、日本代表が立てた作戦、戦略をテーマに進めます。
 
 ずばりポイントは、ボランチの長谷部誠選手でした。
 
 目を引いたのは、彼がこの試合で3バックの中央やサイドのセンターバックのようなポジションを取っていた点です。こがひとつの大きな見所であり、日本の戦略の肝でした。スタート地点ではボランチのポジションを取りますが、ボールを受ける際は、センターバックの位置まで下がるシーンが多く見られました。

 
 ああしたポジション取りをすることで、なにが起こったか。セネガルのFW陣はあらかじめ、日本の守備陣にどうプレッシャーを掛けるべきかをシミュレートしていたはずですが、長谷部選手に動きによってそのポイント、あるいは基準を見失なってしまった。日本の作戦勝ちでしょう。
 
 つまりはスカウティングの勝利であり、セネガル選手のプレッシャーを先読みしていた。相手は戸惑っていますから、こちらとしてはフリーの選手が出てくる。プレッシャーを受けないでボールを回せるので、センターバックからのパス成功率はグンと上がりますし、ポゼッションとビルドアップに大きく寄与したのは言うまでもありません。
 
 日本は先に失点してしまいましたが、慌てることはありませんでした。長谷部選手のこのポジション取りをベースに落ち着いて相手のマークをずらし、引き出すことができたからです。それによって、長谷部選手のボランチの相棒である柴崎岳選手のプレーエリアはいっそう広がりましたが、そのぶん、良い形でボールを受ける機会が増えた。とてもポジティブな相乗効果を生んでいたのです。
 

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