ネイマールが怒って、泣いて、笑って――ブラジルの至宝は大人になったのか?

2018年06月23日 白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト)

王国のエースとしての宿命を背負った男は苛立ちを…

結果として大仕事をやってのけたネイマール。だが、試合中には様々な表情を浮かべた…。 (C) Getty Images

【ロシアW杯・グループE第2戦】ブラジル 2-0 コスタリカ/6月22日/サンクトペテルブルク

 ブラジルの至宝・ネイマールは、ノーインパクトに終わった第1戦(6月17日のスイス戦)に続き、コスタリカ戦でまたもハードなマークに苦しんだ。

 仕掛けては蹴られ、倒されるの繰り返し。ソックスには複数の穴ができるほどだった。足先で細かくボールを動かしギリギリで相手を交わすそのプレースタイル、相手を嘲笑うかのようなフェイント、そして王国のエースという立場を考えれば仕方のない宿命だ。

 その状況にネイマールは、明らかに苛々を募らせていた。

 強引に突破を図っては何度もボールを奪われ、倒されてもファウルがもらえなければ両手を振ってリアクション。審判にアピールしすぎて「口を塞ぎない」と言われたり、キャプテンのチアゴ・シウバやチッチ監督にたしなめられたりするシーンもあった。
 
 77分にはペナルティーエリア内で相手DFに倒されPKを奪い、自ら蹴ろうと動き出した。しかし、VAR判定でシミュレーションと判定され、PKはまさかの取り消しに。その4分後には、敵が目の前で倒れているのにスローインをもらってプレーを再開したが止められ、ボールを地面に叩き付けて激昂。イエローカードを食らう。

「やっぱりネイマールは精神的に成長していないのか……」

 取材スタンドでそんなことを思っていた。試合はまだ0-0。エースがすべきことは、相手やレフェリーに苛々することではなく、仲間を鼓舞して攻撃陣を牽引することだ。それに彼はもう若手ではなく26歳の中堅だ。

 そんな中で91分、ユース代表時代からの盟友フィリッペ・コウチーニョが待望の先制点を挙げる。すると97分、今度はネイマ―ルが追加点を挙げる。ドグラス・コスタが折り返したパスを、中央で叩き込んだ。

 直後にタイムアップの笛がなると、ピッチに跪いて顔を抑えて泣き始めた。そして、仲間たちに声をかけられると、今度は笑顔を見せた。怒って、泣いて、笑って――。なんとも派手な男である。

 イエローカードをもらったあとに自滅しなかったのは評価できるが、正直に言ってネイマールが精神的に本当に成熟したのか、大人になったのかまだ確信が持てない。セルビアとの第3戦(6月27日)を含めて、今後に注目したい。

取材・文:白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト編集部)
 
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