PK戦やり直しの奈良クラブが会見!矢部次郎理事長が舞台裏と本音を明かす

2018年06月18日 雨堤俊祐

PK戦でルール適用ミスが発覚し、JFAから最初に告げられたのは…

名古屋でもプレーをした経験がある奈良クラブの矢部次郎理事長。それだけに複雑な思いもあったようだ。写真:雨堤俊祐

 6月15日、JFAに所属する奈良クラブは、天皇杯2回戦のPK戦がやり直しになった件について奈良市内で会見を開いた。出席した矢部次郎理事長の口からは日本サッカー協会(以下JFA)の決定を受け入れること、そしてルールの周知や、フェイントと判断された4本目のキッカー・金久保彩のシュートが正当なものだったことを訴えた。
 
 事の発端は6月6日。天皇杯2回戦で奈良クラブは、J1の名古屋をPK戦の末に破るというジャイアントキリングを起こした。ところが11日、JFAがルールの適応ミスがあったとしてPK戦をやり直すと発表。試合から5日後に届けられた驚きのニュースだったが、その間、奈良クラブは様々な葛藤を抱えて日々を過ごしていた。矢部理事長の話を時系列に並べると、このようになる。
 
6日(水):天皇杯2回戦でPK戦の末に名古屋に勝利
7日(木):観客(審判3級資格保有者)から「新ルールが適応されていない」とJFAへ指摘が入る
8日(金):JFAから「レフェリーの適応ミスがあり奈良クラブの敗戦」と連絡が入る。同日夜、JFAから3名が奈良へ派遣されてクラブや選手に直接説明
9日(土):JFLのアウェーゲームの為に青森へ移動
10日(日):JFL第12節・ラインメール青森戦に挑むも敗戦
11日(月):JFAから「PK戦のやり直しが決定された」と連絡が入る、JFAも会見を開く
12日(火):JFAが臨時の審判委員会を開き、当該選手のキックが反則ではなく正当なものだという最終見解を示す

 この件の第一報は11日の「PK戦のやり直し」だったが、当事者である奈良クラブは8日に「奈良クラブの負けです」と通達を受けており、その時点ではPK戦やり直しという選択肢は話に出てこなかったそうだ。当然ながら選手やスタッフは混乱し、涙を流す選手もいた。そんな状況で週末の公式戦へ挑まなければならなかったのだ。

 奈良クラブはJ3昇格を目指しており、敵地での青森戦は重要な試合だったが敗戦。試合中にはシュートがネットを揺らしながら主審の判定でノーゴールとなる場面もあり、「またかよ!」と荒ぶる選手もいたという。
 
  その翌日、再度JFAから「PK戦の開始前までさかのぼれる、という選択肢が存在することがわかった」と連絡があり、クラブと選手も話し合ってPK戦のやり直しに挑むことを確認。現在は選手が「PK戦の練習をたくさんやるか(笑)!」と冗談を飛ばすなど、前向きな雰囲気になっている。

次ページ矢部理事長が「今回の件で憎しみを生みたくない」と語った理由は…

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