西野ジャパンの生命線『プレッシング』はW杯でも機能するのか?

2018年06月13日 清水英斗

パラグアイ戦で機能した守備はベースに過ぎないが…

岡崎はパラグアイ戦での守備に手応えを語った。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 6月12日に行なわれたパラグアイとの国際親善試合は、4-2で日本代表が逆転勝利を収めた。
 
 戦い方のベースは整ったのではないか。ワールドカップで必要なものは、一にも二にも守備だ。この試合、日本は高い位置から、バランスの良いプレッシングを仕掛けていた。
 
 パラグアイは岡崎慎司と香川真司によってセンターバックが追い込まれないように、アンカーの6番リチャル・オルティスが下がり、最終ラインを3枚に変形していた。ここで前線2枚のプレッシングが孤立したのが、スイス戦の有様だ。しかし、パラグアイ戦では、特に乾貴士が中間ポジションからマークを捨てて前へ行き、守備を押し出していた。スイス戦のように、ハマらないまま、走らされた印象はない。
 
 岡崎と香川のパスコースの切り方、追い込み方も見事で、日本代表は彼らふたりを起点に、後ろがしっかりと連動してプレッシングを機能させた。岡崎は「前線に入った選手は、日頃チームでも同じスタイルでやっている。そういう選手が4人並んだのかなと、個人的には思った」と語り、ハイプレス戦術と各選手の個性が合致したと感じている。
 
 一応の形は出来た。しかし、これでワールドカップを戦えるかといえば、それは早計だ。岡崎は次のようにも語っている。
 
「個人的にはこれが必要と、ずっと思っていて、すごくうまくいったと思う。でも、パラグアイはそこまでボールを持ち上がれる選手もいなかったし、急にGKにバックパスして落ち着かせるような、こっちからしたら嫌なプレーも、あまりなかった」
 
 確かに、GKのフィード能力の低さに助けられた。乾が捨てたマーク、右サイドバックのアラン・ベニテスのところに、GKからミドルパスを通されていたら、プレッシングが振り回される要因になったはず。しかし、それはトライこそ多かったが、ほとんどがミスキックに終わった。日本としては楽な面もあった。
 
 パラグアイはセンターバックが持ち運ぶプレーもなく、あるいは3月に対戦したウクライナのように、インサイドハーフが最終ラインまでボールを受けに下がるようなビルドアップの工夫もない。日本のプレッシング戦術を困らせるようなプレーは、ほとんど見られなかった。日本にとってはハメやすい相手だ。この試合で機能した守備はベースであり、ベースに過ぎない。
 

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