【週刊サッカーダイジェストの目】前半の戦いぶりにあったギリシャ攻略のヒント

2014年06月22日 原山裕平

山口のサイドチェンジで敵最終ラインを広げることでチャンスが生まれていた。

攻略の手掛かりは前半から見えていたものの、日本はゴールを奪い切れずドローとしてしまった。 (C) SOCCER DIGEST

 今野泰幸はインテリジェンスに溢れるプレーヤーである。ギリシャ戦でも相手のストロングポイントを抑える重要なタスクをこなしていた。
 
 前半から日本はギリシャの特長である右サイドの攻撃を無力化するために、左SBの長友佑都を高い位置に押し上げていた。そのため攻撃時には本来、長友がいるはずのエリアに今野がスライドし、ボールを受けるとハーフウェーライン付近まで持ち上がって、同サイドの岡崎慎司にくさびを入れる。そして岡崎のポストプレーを受けた長友が左サイドを抜け出す形で、いくつかのチャンスを生み出した。
 
 相手が前線からプレスをかけてこないこともあったが、今野の持ち上がりは左サイドに厚みをもたらすと同時に、狙いどおりにギリシャの右を封じた。そしてこのエリアに本田圭佑も顔を出すことで、日本の攻撃はほぼ左サイドに集中していた。
 
 ただし、ボールポゼッションで完全に上回りながら、日本はなかなかギリシャの守備網を攻略できない。長友からのクロスも、マノラスとパパスタソプーロスの強力なCBコンビにはね返されるのみだった。
 
 日本とすれば狙いどおりの戦略ではあったものの、そこに固執した感は否めない。粘り強く繰り返す中で綻びを見出そうとしたのだろうが、そう簡単にはいかなかった。ならば他の策はなかったのだろうか。今野は次のように指摘する。
「前半は僕らの左サイドでチャンスを作れそうだと思っていた。そこで、オカちゃん(岡崎)とか、サコ(大迫)とか、(本田)圭佑はよく見ていたんだけど、逆の(大久保)嘉人のところがすごく空いていたというのを試合中に言われて……。そこを使えていれば、展開はもっと変わっていたと思う」
 
 空いていたはずの大久保は、パスが届かない状況に、いら立ちを隠せなかった。
「前半からバイタルエリアがすごく空いていたので、要求しましたよ。後半は多少よくなりましたけど、前半からそれができてればもっとチャンスがあったと思う」
 
 実は序盤の日本は右からのほうが良い形を作れていた。最大のチャンスは19分、山口蛍のサイドチェンジを受けた右サイドの内田篤人が中央に切れ込み大久保にくさびを通す。その落としを大迫がフィニッシュに持ち込んだシーンだ。
 
 山口のサイドチェンジがギリシャの最終ラインを横に広げ、その間に大久保が入り込めたのが、好機演出の要因である。こうした大きな展開が、ギリシャ攻略の可能性を示していたのだが、いかんせん頻度が少なすぎた。
 
 38分にカツラニスが退場し数的優位となると、ギリシャの守備はより堅固になっていく。「10人になってからの方が難しいゲームになってしまった」と長谷部誠が指摘したとおり、そこからの日本はさらに苦境に立たされている。
 
 もちろん数的優位を生かせなかったのは課題であるし、指揮官の采配が解せなかったのも事実だろう。とはいえ、勝てなかった原因はそれだけではない。攻略の手掛かりがあった前半のうちに、勝負を決めておきたい試合だった。

取材・文:原山裕平(週刊サッカーダイジェスト特派)

【写真で振り返る】日本 対 ギリシャ
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