イタリア人記者が暴く!「欧州サッカー界の隠れたカースト」(後編)

2018年06月04日 クラウディオ・デ・カルリ

スクデットを手元に引き寄せた不可解なジャッジ。

インテルのベシーノ(背番号11)が退場になったこの不可解なジャッジがなければ、試合の結果もスクデットの行方も違ったものになっていたかもしれない。(C)Getty Images

(前編からの続き)

 私がここまで書いてきたことは、単なる噂話ではない。ひとりのプロフェッショナルとして慎重に裏を取った結果、確実だと思われることだけに限られている。しかしあくまで証言の積み重ねであり、具体的な証拠があるわけではない。それに、これらが事実だったからと言って、なにかが変わるわけでもないだろう。

 しかしこれは、レアル・マドリーだけの問題ではない。ユベントスというもうひとつのメガクラブも絡んでいる。会長のアンドレア・アニエッリが昨年からヨーロッパクラブ連合(ECA)の2代目会長を務めていることからもわかる通り、欧州クラブカーストの中でも上位に位置する名門であり、イタリアでは絶対的な支配力を誇っている。セリエAではこの7年間、リーグタイトルを独占中だ。

 12年前に起こり、史上初めてのセリエB降格という屈辱をもたらしたスキャンダル「カルチョポリ」は今なお記憶に新しいが、審判絡みのエピソードはそれだけに留まらない。審判がユベントスに有利な判定をするたびに隠然たる影響力や圧力の存在が(とくにライバルチームのサポーターやマスコミによって)取り沙汰されてきた。
 
 チームとしてはもちろん、クラブとしても圧倒的な強さと影響力を誇るだけに、ユベントスは常にイタリアでもっとも愛されると同時にもっとも憎まれるクラブであり続けてきた。

 今シーズンのスクデットを決定づけた、セリエA第35節のインテル戦はそのサンプルのような試合だった。前節ナポリとの直接対決に敗れたユベントスは、この試合でも80分過ぎまでひとり少ないインテルに1-2でリードを許していた。インテルがひとり少なくなったのは、ウルグアイ人MFのマティアス・ベシーノが、不可解なレッドカードを受けて退場になったからだ。

 一方のユベントスは、すでに警告を受けていたミラレム・ピャニッチがかなり危険なファウルを犯したにもかかわらず、審判から見逃されている。そしてユベントスは、最後の5分で2点をねじ込んで逆転勝ちを収め、もしそのまま敗れて、あるいは引き分けていればその手から逃げたであろうスクデットを手元に引き寄せたのだった。

 その翌日、ユベントスのオフィシャルサイトには、ベシーノからファウルを受けて傷がつき腫れ上がったマリオ・マンジュキッチの足首の写真が公開された。しかし、少し注意してみれば、この傷はすでに治りかけており、少なくとも数日前に受けたものであることは明らかだった。そして実際ファウルの場面のリプレイを見ても、ベシーノのスパイクはマンジュキッチの足首を削ってなどいなかった。

 ユベントスは、欧州クラブカーストの中ではマドリーよりも下位にある。しかしイタリアではカーストの最上位に位置している。UEFAの中でも、各国リーグの中でも、カーストで上位にあるクラブは、下位にいるクラブよりも有利な判定や特別な配慮を受けることが多い。

 それは、カースト上位にあるクラブはあらゆる意味で強い影響力を持っており、それが審判からマスコミまで、この世界のすべてのインサイダーに対して、無言の圧力となっているからだ。疑いがある時には強い者の側につくというのは、あらゆる世界における処世術の基本である。
 

次ページ自分たちこそがCLというコンペティションの主。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事