イタリア人記者が暴く!「欧州サッカー界の隠れたカースト」(前編)

2018年06月03日 クラウディオ・デ・カルリ

CL決勝前にペレス会長が唯一頭を悩ませていたのは…。

欧州サッカー界にカーストがあるならば、その頂点にいるのは間違いなくこのマドリーだという。 (C)Getty Images

 過去5シーズンで4度のチャンピオンズ・リーグ(CL)制覇という実績が示す通り、レアル・マドリーはヨーロッパ最強のチームであり、クラブだ。そのことに疑いはない。

 キエフで行なわれた今シーズンの決勝でピッチに立った11人のスターターは、1年前のカーディフとまったく同じ顔ぶれだった。ケイラー・ナバス、ダニエル・カルバハル、ラファエル・ヴァランヌ、セルヒオ・ラモス、マルセロ、ルカ・モドリッチ、カゼミーロ、トニ・クロース、イスコ、カリム・ベンゼマ、そしてクリスチアーノ・ロナウド。

 これは長いCLの歴史で一度もなかったことだ。チームを率いる監督はジネディーヌ・ジダン。サン・シーロでアトレティコ・マドリーを破った2年前の決勝も含め、3年連続でマドリーを頂点に導いたことになる。

 ジダンはすでに2014年、「ラ・デシマ」(10度目のCL制覇)を勝ち取ったときにも、カルロ・アンチェロッティのアシスタントコーチとしてマドリーのベンチに座っていた。

 2014年5月24日にリスボンのラ・ルスで行なわれたこの決勝、アトレティコが1点を先制して前半を折り返した時点で、フロレンティーノ・ペレス会長はアンチェロッティを解任しようと心に決めていた。

 それが起こらなかったのは、後半ロスタイムにコーナーキックからS・ラモスが同点ゴールをねじ込み、その後延長戦で3点を叩き込んで、逆転で「ラ・デシマ」を達成したからだ。しかし翌シーズンに無冠でシーズンを終えると、ペレスは容赦なくアンチェロッティを切り捨てた。勝てない者は去れというのがこのクラブのルールだ。
 
 CLにかかわるレコードは、その大半をマドリーが持っている。現在、UEFAクラブランキングでは、2位アトレティコ以下、バイエルン・ミュンヘン、バルセロナ、ユベントスを大きく引き離してダントツの1位だ。マンチェスター・シティは8位、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッドはトップ10にすら入っていない。

 もし欧州サッカー界にカーストがあるならば、その頂点に位置するのは間違いなくマドリーだ。キエフで行なわれたリバプールとのCL決勝を前にして、ペレス会長が唯一頭を悩ませていたのはトロフィーの置き場所だった。

 国際タイトルだけでも、7つのチャンピオンズ・カップ(CLの前身の大会)、5つのビッグイヤー(CLのトロフィーの俗称)と、合わせて12の欧州クラブ王者タイトルに加え、UEFAカップふたつ、インターコンチネンタルカップ6つ、さらに国内タイトルがリーガ33回、コパ・デル・レイ19回。サンチャゴ・ベルナベウにあるトロフィールームは満杯で、どんなに詰めても次のビッグイヤーを置く場所を捻出することはできそうになかった。

 マドリーは世界でもっとも多くのタイトルを誇るサッカークラブであると同時に、世界最高のスポーツエンターテインメントカンパニーでもある。6億ユーロ(約780億円)を超える売上高の半分以上は、スポンサーやマーチャンダイジングなどのコマーシャル収入だ。世界中に散らばるファンの数は4億5000万人にも上る。
 

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