【コラム】聞き慣れた日本評と想定内の戦いぶり… ガーナ戦の「トライ」で露呈した不安要素は?

2018年05月31日 加部 究

良くも悪くも日本らしい想定内の展開が繰り広げられた

23人のメンバーが発表された日本代表。ガーナ戦の戦いぶりは良くも悪くも日本らしさが垣間見えるものだった。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 真剣モードのオールスター戦、それ以上でもそれ以下でもなかった。

 スタメン平均が29.5歳、26名平均は27.5歳。西野朗監督は、実績のある人気選手を再結集して初陣に臨んだ。満員のスタンドでは、ワンプレーごとに嬌声が束になる。顔見せ興行としては大成功だった。

 対戦したガーナのジェームズ・アッピアー監督の端的なコメントも聞き慣れたものだった。
「日本はとても良いチームだ。よくポゼッションもして、パスも繋ぎ、クロスも上げた。ただ守備と決定力に少し弱さが見えた」

 良くも悪くも、目の前で繰り広げられたのは、日本らしい想定内の展開である。前任者は厳格な規律で縛り、堅守速攻を貫こうとした。一方で新監督は、縦一辺倒のタガを緩め、大島僚太を起点に敵陣でパスを繋ぐシーンも何度か見せた。

 経験豊富な選手たちだけに、個々に目を凝らせば、唸らせるシーンがなかったわけではない。長友佑都は相変わらずアグレッシブに走り、確信を持って仕掛け続けた。大島は味方の効果的な動きを瞬時に察知し、何度か最適なパスを通した。追いかける展開で登場した柴崎岳は、かつての中田英寿のように挑戦的なスルーパスを試み、武藤嘉紀は最前線で単独でもボールを奪取する強さを見せた。しかし攻守の肝心な意識の共有は詰め切れず、結局はそれが結果として表われた。
 
 西野監督は終盤に入ると「4バックで少し攻撃的に出てみた」と話しているから、逆に3バック(5バック)はとりわけコロンビア戦を意識した実験だったようだが、最後尾に長谷部誠という保険をかけても、数的優位な状況は裏へのパス一発で崩壊。PKを獲られた。またハリルが去り、リスク回避の鉄条が薄れたせいか、井手口陽介や酒井高徳が致命傷になりかねないプレゼントパスを渡してしまうシーンもあった。

 例えば、昨年逆転でリーグ制覇をした川崎でさえも、今年のシーズン当初は攻撃の仕上げ部分で隔靴掻痒感が拭えなかった。さらに脳裏に浮かんだのは、2002年秋、ジーコが初めて日本代表の指揮を執った試合だった。MFには中田英、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一と黄金のカルテットを並べ、最前線には高原直泰を配した。対戦相手がジャマイカだったこともあり、夢と希望に満ちたゲームとなったが、4年後には苦渋の結末を迎えている。要するに川崎のように成熟したチームでもオフを挟めば阿吽の呼吸に乱れが生じ、ジーコ時代のように日本史上最高級の粋を集めても、即興の連続では限界があった。しかも川崎には連日練習をともにし、ジーコには4年という時間が与えられていたが、新生日本代表の本番は目前に迫っている。
 

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