【W杯キープレーヤー解体新書】香川真司|パスを引き出し、より直線的にフィニッシュに絡みたい

2014年06月19日 ロベルト・ロッシ

2ライン間で足下にボールを受けるプレーにこだわりがちで…。

ボールが足につかなかったコートジボワール戦は、ノーインパクトに終わる。巻き返しはなるか。 (C) SOCCER DIGEST

 高度なテクニックとダイナミズム、スペースに入り込むタイミングの感覚、そしてなにより、卓越したゴールセンスが目を引く。そういった自身の特性をチームのメカニズムのなかで、周囲と連携しながら発揮して違いを生み出す。まさに日本代表のスタイルを象徴するアタッカーだ。
 
 マンチェスター・Uでは外に開いてタッチライン際でボールを受け、そこから独力で局面を打開し、ペナルティーエリアに切れ込む動きが求められる。これは、ウイングに単独突破を要求するイングランド的な発想ゆえ。しかし香川は、単独ではなく周囲との連携によってこそ持ち味を発揮する、コレクティブなプレーヤーだ。
 
 日本代表ではサイドを基点にしながらも2ライン(DFとMF)間に入り込んでパスを受け、そこからCFの柿谷や大迫、トップ下の本田、ボランチの位置から上がってくる遠藤、さらにはオーバーラップを繰り返す長友とのコンビネーションによって、決定的な場面を創出している。
 
 本来のポジションであるトップ下と比べれば、ゴールから遠いエリアでのプレーが増えるため、フィニッシュに絡む頻度は低くなっている。だがこれは、最近の香川が2ライン間で足下にボールを受けるプレーにこだわりがちで、オフ・ザ・ボールの動きから裏のスペースに走り込み、スルーパスを引き出そうとする意識が低下しているためだ。
 
 求められるのはダイアゴナルな動きからラストパスを導き、逆サイドの展開に合わせてファーサイドでクロスに合わせるなど、コンビネーション抜きで直接的にフィニッシュに絡むプレーだ。
 
 日本代表のサッカーはゴール前で手数を掛けすぎ、相手を崩しきらないうちはシュートを撃たない傾向が強い。柿谷や岡崎と同様に、香川も裏を狙う動きをプレーに織り交ぜていけば、チームの攻撃により奥行きが生まれ、ゴールチャンスも増えるはずだ。
 
分析:ロベルト・ロッシ
構成:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト 出場32か国戦術&キープレーヤー完全ガイド』p36より抜粋。
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