【小宮良之の日本サッカー兵法書】 最高峰リーグのトレンドは“ぶっつけ本番”の日本代表にも有用だ!

2018年05月25日 小宮良之

あのバルサすら潮流に乗っている

リーガでの無敗優勝に大きく近づいたバルサと、CL3連覇に王手をかけているマドリー。ともに3トップの代名詞的なクラブだったが、状況に合わせて的確に変化を遂げている。 (C) Getty Images

 今シーズン、世界最高峰のリーグ、リーガ・エスパニョーラでシステムの潮流となったのは、4-4-2である。
 
 これは「原点回帰」に近いだろう。一時、2トップは否定され、1トップ、もしくは3トップが全盛だったが、結局、ピッチを広くカバーし、効率良く戦うには、この配置が理想的だということだろう。
 
 チャンピオンズ・リーグ(CL)決勝に進出したレアル・マドリー、ヨーロッパリーグ(EL)を制したアトレティコ・マドリーは、どちらも4-4-2を採用。幾つのシステムも、有力なオプションになっている。
 
 刮目すべきは、長いこと4-3-3、もしくは3-4-3を基本にしてきたバルセロナまでが、変則的4-4-2を使っている点である。
 
 このように、オーソドックスな構えである4-4-2が再び主流になっているのには、理由がある。ピッチを、縦に左、左中央、右中央、右と4分割すると、最も均等なスペース配分ができる。個の能力が高く、持ち場を守れる、もしくは戦える選手がいる場合、効率的な戦いが可能になるのだ。
 
 特に後半になると、消耗度の差が浮き彫りになる。今シーズン、バルサが前半は手堅く相手の攻撃を受け止めながら、後半に一気に勝負を決めたのは偶然ではない。
 
「ゲームにおいては、相手が2トップか3トップかで、状況に合わせてプレーは変えなければいけない。必然的に、中盤の枚数も変わるから。これはあくまで個人的な意見だが、中盤は(3枚よりも)4枚でプレーする方が不都合は少ない。なぜなら、(攻めながら)カウンターを受ける心配が減るからね」
 
 これは、バルサの中盤を担うクロアチア代表、イバン・ラキティッチの言葉である。つまり、良い守備が良い攻撃の支えになっているということ。攻撃的なフットボールは、守備が安定することによって生まれる、という解釈もあるのだ。
 
 バレンシア、エイバル、ヘタフェといったクラブが今シーズン、健闘を示したのも、4-4-2で堅牢な防御ラインを形成しているからだろう。

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