【現地発】クロップ監督がコウチーニョに見切りをつけ、リバプールが高価売却に歓喜したワケ

2018年05月14日 エル・パイス紙

ダイナモ的資質が欠けていた。

クロップ(右)はテストを繰り返した結果、コウチーニョ(左)が自身のスタイルに不向きな選手であると判断。バルサから高額オファーが舞い込んだのは、ちょうどそんなタイミングだった。(C)Getty Images

 今シーズンのリバプールの快進撃は、ユルゲン・クロップ監督が2017年5月に打ち立てた明確なチーム戦略が根底にある。

 プレミアリーグやチャンピオンズ・リーグ(CL)のタイトル獲得を視野に入れて、指揮官はクラブ幹部たちに昨シーズンを通じて実施した適正テストの結果を報告。自身がチームにとって最適だと考える4ー3-3システムの中で、フィリッペ・コウチーニョを配置できるポジションは、左右のウイングしかないという結論に至ったことを伝えた。

 その話し合いの中でクロップは、クラブからモハメド・サラー獲得の可能性を伝えられると、歓迎の意を示しつつ、「コウチーニョとポジションが被る点がネックになる」との見解を述べた。指揮官が不動の存在と位置付けていたサディオ・マネやロベルト・フィルミーノとは異なり、すでに昨シーズンが終了した時点で、コウチーニョのチーム内での立場は揺らぎつつあった。

 それから約半年後の2018年1月6日、ネイマール、キリアン・エムバペに次いで史上3番目に高額の移籍金、1億6000万ユーロ(約208億円)でコウチーニョをバルセロナへ売却することが決定。すでに絶対的な戦力ではなくなっていた選手を高値で売りさばけたことで、クラブの幹部たちはまるでタイトルを獲得したかのように抱き合いながら、喜びを分かち合ったという。
 
 クロップはドイツ伝統のフィジカル重視のサッカーの信奉者で、テクニシャンよりも継続的にインテンシティーを発揮できる選手を重用する。いくらテクニックや戦術眼に優れていても、マークを外す動きやプレッシングなど、オン・ザ・ボールとオフ・ザ・ボールでハードワークできる選手でなければ、クロップの評価を得るのは難しい。

 そのクロップが就任2年目となる昨シーズンに行なったテストとは、そうしたみずからのサッカー観に照らし合わせ、選手たちを振り分けるためのものだった。指揮官は4-2-3-1と4-3-3を併用し、さまざまな役割を与えることで、すべての選手の適性を見極めていった。

 その際に、クロップがとりわけ重視したのが、攻から守、守から攻へのトランジション。その結果明らかになったのは、フィルミーノ、マネ、エムレ・ジャン、ジョルジニオ・ヴァイナルダム、ジェームズ・ミルナー、アレックス・チェンバレン、アダム・ララーナといった選手と比較したときの、コウチーニョの持久力の低さだった。

 またクロップは、アンカーにジョーダン・ヘンダーソン、両インサイドハーフにヴァイナルダムとジャンを並べる形が中盤の最適解であると導き出し、逆に継続的に長い距離を走るためのダイナモ的資質が欠けていると判断されたコウチーニョは、「中盤不適応」の烙印を押された。

 例えば実戦を想定し、フィジカルテストの一環として行なわれた60メートル走でも、コウチーニョが続けて走れるのは2本までで、30秒前後の休息を取らなければ、3本目のスタートを切ることはできなかった。これでは、クロップが求める高いダイナミズムをベースとする戦術的要求に応えるのは不可能だ。
 

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