J2首位! 大分指揮官が目指す理想のスタイルは「広島のコーチ時代に…」

2018年05月11日 梶山大輔(サッカーダイジェスト)

「完全に真似することは難しいが、少しでも近づけるようチャレンジしている」

冷静な語り口で自身の哲学を語った片野坂知宏監督。あの“恩師”に話題が及ぶと、笑顔で話を続けてくれた。写真:安藤 隆(スタジオ・シーン)

 就任3年目の今季は、見事な手腕でチームをJ2首位に導いている。しかし片野坂知宏監督は、目の前の試合に集中するスタンスを崩さない。「"トリニータのサッカー"を貫くことが重要」と理想のパスサッカーを追求する指揮官に、じっくりとお話を伺った。

※『サッカーダイジェスト』2018年5月10日号より抜粋して転載
 
――◆――◆――
 
――10節を終えて首位に立ちました。チームの現状をどう見ていますか?(編集部・注/インタビューは4月26日に実施)

「ここまでわずか1敗で勝点を順調に積み上げられていることに手応えを感じています。ただ、だからといって浮かれてはいけない。首位にいるとはいえ欲を出さず、"トリニータのサッカー"を貫こうと選手には伝えています。攻守においてもっと改善できるはずですし、そうした積み重ねが、最終的な結果につながります」

――好調の要因は?

「まずは怪我人が少ないことですね。また試合ごとの狙い、戦術を全員が共有できている点でしょうか」

――就任3年目を迎え、パスサッカーの浸透度は高まっていますか?

「年々精度が上がっています。就任1年目は(中盤フラットの)4-4-2を採用し、ポゼッションスタイルに着手しました。昨季から3-4-2-1へ変更しましたが、それからしばらくはビルドアップでミスが重なっていました。ところが、今季はそれがほとんどありません」

――ミスが減った理由は?

「つなぎのテンポが良くなって、判断の質も上がった。そして、ボール保持者へのサポートが厚くなった。これにより、プレスを上手くかわせています」
 
――GKも簡単に蹴り出さず、ビルドアップの始点になっています。

「GKもフィールドプレーヤーのひとりという考えです。在籍する4人(高木駿、修行智仁、ムン・キョンゴン、兼田亜季重)には、積極的にボールを触って、前線へフィードするように指示しています。正直ヒヤヒヤしますよ(笑)。でも選手のミスはすべて監督である自分の責任だと覚悟しています」

――徹底してパスをつなぐスタイルに、ポゼッションへの強いこだわりを感じます。

「そうやって主導権を握るのが理想。最終節までこの姿勢を貫くことが大切です」

――戦術面では、攻撃時に4-1-4-1へ変わり、守備時には両ウイングバックが最終ラインに加わり5バックでブロックを作ります。この"可変システム"を用いるうえで、意識していることは?

「攻撃時の立ち位置をしっかりと定め、ボールの受け方、背後を取る駆け引き、ワンタッチで崩すアイデアで上回る。さらに、そこで生じたスペースを有効活用することですね」

――この"可変システム"は(ミハイロ・)ペトロヴィッチ監督(現・札幌)の戦術に近いですね。

「広島のコーチ時代(2010年~13年)にペトロヴィッチさんの下で2年間働かせていただき、影響を受けました。とても攻撃的で楽しいサッカーです。完全に真似することは難しいですけど、少しでも近づけるようチャレンジしています」

――どこに影響を受けましたか?

「攻撃のアイデア、判断、バランスです。指導していて選手たちと一緒にサッカーをやっているような楽しさがありましたし、モノにできればどの相手にも主導権を握れるな、と感じました」

 

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