【鳥栖】連敗中もブレなかった"フィッカデンティ流"と清水戦で起きた"ポジティブな変化"

2018年05月08日 荒木英喜

指揮官は「この取り組み方で絶対に抜け出せる日が来る」と言い続けた

フィッカデンティ監督は、連敗中も「内容は悪くない」と選手を鼓舞していた。写真:川本学

「結果が出ないから自信を失ない、自分たちでしっかりできていると思っているやり方を変えて混乱してしまうこと」

 鳥栖のマッシモ・フィッカデンティ監督は3-1で勝った清水後の会見で、連敗中のチームが一番やってはいけないことをこう話した。連敗すると監督がチーム戦術を試行錯誤し、戦い方に迷いが生じることはよくある。しかし、フィッカデンティ監督は7連敗中でも「内容は悪くない」「この取り組み方で絶対に抜け出せる日が来る」と言い続け、選手たちにチームがやっていることに間違いはないと自信を持たせた。
 
 ただひとつ、連敗を止めた13節の清水戦で変わったのはバランス。連敗中は失点するとそれを取り戻すために前がかりになってしまい、チームとしてのバランスを崩してバイタルエリアに広大なスペースを作っていた。そこを相手に突かれてさらに失点を重ねていた。だがこの試合ではオウンゴールで失点してもバランスを保ち、バイタルエリアを閉じ続けた。

「残り時間が長かったこともありますがバランスを崩さず、2点目、3点目を取れたので試合運びが楽になった。攻撃している時のバランスがよければ、バイタルも変に空かないし、攻守が連動していたと思います」と原川力は振り返った。

 トップ下で先発した小野裕二は試合前からバイタルエリアを閉じることを意識していた。
 
「試合前から(高橋)秀人くんと話していて、『なるべく真ん中でどっしりと構えていてください』と。その周りは自分が行きますと伝えていたし、運動量のある(高橋)義希さんにも、最悪、秀人くんが出なきゃいけない時は義希さんが『カバーしてくれ』と言っていました」

 アンカーで構える高橋秀人はいつもなら攻撃参加するタイミングで自重した。

「ビハインドにならなかったからそこまで(攻撃参加しなかった)っていうところと、相手のシステムとの組み合わせで今日はちょっと、監督と話して自重して、その分、義希さんとかが攻めに転じてくれていたので、みんなのバランスのなかでそういう選択はしました」

 高橋秀が話したように結果的に追う展開にならなかったことがチームにバランスを保たせる要因になったかもしれない。しかし、鳥栖が大事にしてきたのは、誰かが空けたスペースを他の選手が献身的にカバーするやり方だ。

 チームとしてのバランスを保ったことで、それを取り戻す試合ができた。今後、先制されても今日のようにバランスを崩さない試合運びができれば、粘り強い鳥栖が戻ってくるはずだ。

取材・文●荒木英喜(フリーライター)
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