DFを翻弄した圧巻のスキル! 柿谷曜一朗が示した「勝てばいいってもんじゃない」の心意気

2018年05月06日 サッカーダイジェストWeb編集部

その圧倒的なテクニックに、スタンドからは何とも言えないどよめきが起きた

長崎戦で華麗なゴールを決めてみせた柿谷。子どもたちに向けて最高のプレゼントとなったに違いない。写真:川本 学

[J1リーグ13節]C大阪 3-1 長崎/5月5日/ヤンマー

 真似のできない、圧巻の技術だった。

 3万人近い観衆が詰めかけたヤンマースタジアム長居でのセレッソ大阪対V・ファーレン長崎の一戦。30分、敵陣でボールをカットした柿谷曜一朗は、高木俊幸からのリターンパスを受けて前を向く。ペナルティエリア内に入り、巧みなボールさばきでDF高杉亮太に尻もちをつかせてゴール前へ。飛び出してきたGKの動きを見極め、冷静に右足インサイドでシュートを流し込み均衡を破った。

 試合前に少年サッカーの開会式が催されたため、多くの少年少女が見守った子どもの日の一戦。圧倒的なスキルに、スタンドからは何とも言えないどよめきが起きた。

「(最近は)前が点を取れていなかったんで、結果を残すことを考えていた。(ボールを)前から取りにいくというのはあまり言われていないけど、チャンスやと思ったんで。思い切って仕掛けた結果、ゴールにつながって良かった」

 ゴール以外にも見せ場は多かった。3分に山口蛍の右クロスに反応し、11分にはオスマルの縦パスで抜け出しかける。53分には松田陸のグラウンダーのクロスに対しニアに飛び込むなど、72分に途中交代を告げられるまで、実に4度の得点機を迎えている。左MFを主戦場とした昨季は全34試合に先発出場しながら6得点に止まったのに対し、今季は13節を終えた時点で4得点。ペースは明らかに昨季を上回っている。

 今季が始動した時、ひとつの変化があった。プロ契約を交わした16歳の頃からJリーグでは一貫して「MF」登録だったのが、今季から「FW」へと変更された。そこには、強い意志が見え隠れする。
 
 攻撃的MFとして鳴らしてきた柿谷が本格的にFWへとコンバートされたのは、12年だった。そのシーズンの途中からC大阪指揮官に復帰したレヴィー・クルピ監督によって2トップの一角に固定され、ゴールを重ねた。1トップに抜てきされた翌年、ついに日本代表へと招集される。14年ブラジル・ワールドカップにもFWとして出場した。

 いつしか、最も個性を発揮できるポジションはFWとなり、こだわりもハッキリと口にするようになった。ゴール前のこぼれ球を詰めた横浜との開幕戦のゴール。2節・札幌戦ではカウンターから仕留め、6節・鳥栖戦ではペナルティエリア内での相手のミスを見逃さずに今季3点目を決めた。そして長崎戦での先制弾。MFでもFWでも守備の役割を担うことには変わりないが、いずれも最前線にいたからこそ生まれたゴールだった。
 

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