【現地発】24節までに50失点、その後の11試合は4失点…ベティスが堅守のチームに変貌を遂げた理由

2018年05月02日 エル・パイス紙

バルサ出身のDFが浮上のキーマンに。

1月にドルトムントから獲得したバルトラ。このバルサ・カンテラ出身のCBの加入により、ベティスの守備力は劇的に向上した。 (C)Getty Images 

「要因はいろいろある。でも一番はチームが成熟したことだ」
 
 ベティスのキケ・セティエン監督に最近の好調の要因について訊ねると、こんな答が返ってきた。

 35節のマラガ戦の勝利(2-1)で、ベティスは直近8試合を7勝1分けの無敗で乗り切り、5シーズンぶりの欧州カップ戦出場へ、また一歩大きく前進した(7位ヘタフェとの勝点差は10)。ホアキン・サンチェス、マルク・バルトラ、アンドレス・グアルダード、ローレン・モロンといった個々の活躍も光るが、セティエン監督が言う「チームの成熟」の最大の拠り所になっているのが、守備力の向上だ。

 レアル・マドリー相手に5失点(試合は3-5で敗れた)を喫した24節終了時点で、ベティスの総失点数は50。これはラス・パルマス、デポルティボに次いでリーガワースト3位の数字だった。それが以降11試合の総失点数はわずかに4。1試合あたりの平均失点は2.08から0.36へと劇的に減少した。とりわけ29節から34節までの6試合は、相手に1点も与えていない。

 守備力向上に大きく関係しているのが、1月に加入したバルトラの活躍と3バックの本格導入だ。

「3バックを採用してすべてが解決するほど単純なものではない」と前置きしたうえで、セティエン監督は守備力向上の要因を次のように分析する。

「センターバックを1枚増やしたことで、相手のクロスをコントロールしやすくなった。左右のウイングバックをはじめ、チーム全体の"クロスを上げさせない意識"が高まったんだ。チームの成熟が守備力の向上を促し、さらにはそれがペナルティーエリアから離れた位置で、相手の攻撃を食い止めることを可能にしている。もちろん、ひとたびボールを奪えば、テンポの良いパスワークは健在だ。不用意なボールロストはほとんどない。システムは変更したが、チームのアイデンティティーは不変なのだよ」
 
 一方、2001年から2009年までベティスに在籍し、2006年のドイツ・ワールドカップにスペイン代表として出場した実績を持つクラブOBのファニートは、新戦力のバルトラの貢献を強調する。

「3バックの導入は確かに大きな要因だが、その中でキーマン的な働きを見せているのがバルトラだ。彼の加入が、周囲のパフォーマンスを引き上げた。つねに高い集中力を持ってプレーし、的確なコーチングで周りの選手のポジションを修正する。そして、フニオル・フィルポの台頭も大きい。彼がレギュラーに定着したことで左サイドの守備力がアップしたんだ。中盤3人の距離感も抜群で、ディフェンスラインの前方で防波堤としての役割を果たしている」

 クラブ副会長のホセ・ミゲル・ロペス・カタランは、バルトラの獲得はクラブにとって大きな賭けだったことを明かす。

「ベティスのようなクラブが、冬の移籍市場でディフェンダーの獲得にこれほどの大金(1000万ユーロ=約13億円)を投じることは、普通ではあり得ない。リスクのある決断ではあったが、いまのところ吉と出ている」

 バルトラ加入後のチームの勝点獲得率は73%。この数字が補強の大ヒットぶりを如実に示している。

文●ラファエル・ピネダ(エル・パイス紙/セビージャ、ベティス番記者)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
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