【現地発】注目されるジェラード“監督”の動向――リバプールの英雄はレンジャーズへ行くべきではない?

2018年05月01日 山中忍

名声を笠に着る様子はないジェラードだが……。

現役時代にはチャンピオンズ・リーグ制覇やカップトレブルなど様々な栄光をもたらしてきたジェラード。そうした名声はレンジャーズでは意味をなさない……。 (C) Getty Images

 4月29日、スコットランドのプレミアシップで、セルティックが7連覇を決めたレンジャーズとの一戦は5-0で決着がついた。

 この「オールド・ファーム」と呼ばれるグラスゴーでのダービーマッチに注目していたイングランド人は多かったことだろう。というのも、生え抜きクラブだったリバプールの枠を超えて、英国民に愛されたスティーブン・ジェラードのレンジャーズ監督就任が噂されて間もなかったからだ。

 英国メディアでは、1週間以内に前向きな返答がもらえるだろうという、レンジャーズ側の強気な見方も伝えられていた。

 ジェラードが、スコットランドの強豪でトップチーム監督としての経験を積み、ユルゲン・クロップ現体制からリバプールの指揮権を受け継ぐ。それはファンならずとも理想に掲げるシナリオだ。しかし現実は甘くなく、巷の意見も分かれている。どちらかと言えば、レンジャーズの監督就任要請を受けるべきではないとの声が強いようにさえ思える。

 そうした意見は指揮者間でも同様だ。
 

 現役時代に同じ街のライバルクラブ、セルティックでゴールを量産し、英雄となった元イングランド代表FWのクリス・サットンは、6年前の破産による戦力ダウンの傷がいまだに残っているレンジャーズでの監督挑戦は、「いきなり監督キャリアに大きなダメージを与えかねない」と語る。

 また、ジェラードにとってリバプールの大先輩にあたり、レンジャーズでの監督歴も持つグレアム・スーネスは、由緒あるクラブからの誘いは、「2度目はないかもしれないのだから受けるべきだ」と就任を勧めつつも、「現役時代の功績など監督としては何の役にも立たない」と警告を発している。

 当のジェラードに選手としての名声を笠に着る様子はない。だからこそ、現役引退直後に受けたMKドンズ(現3部)の要請を断り、古巣のユースで指導者としての道を歩み始めている。

 昨夏から指揮を執るリバプールのU-18チームでも、選手たちの前で現役時代の自分を引き合いに出したり、自身のプレー映像を見せたりするようなことはない。さらにU-18プレミアリーグ(北部)で3位につけ、FAユースカップでは32強入り、UEFAユースリーグでは16強まで勝ち進んだ就任1年目に「山ほどミスを犯してきた」と、地元紙『Liverpool Echo』に語るなど、失敗から学ぶ謙虚な姿勢を見せてもいる。

次ページ世間の目に晒され、経営陣の支援が約束されない場所。

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