【小宮良之の日本サッカー兵法書】バルサが抱えるジレンマ…「ラ・マシア」は機能していないのか!?

2018年04月26日 小宮良之

今、その存在意義が問われている

多くの優れた選手を世に輩出し、下部チームも結果を出している。にもかかわらず、トップチームにその恩恵がどれほどもたらされているかというと……。写真はUEFAユースリーグ優勝後。 (C) Getty Images

 欧州サッカーシーズンは佳境に入っているが、先日はバルセロナのユースチームが、UEFAユースリーグで決勝に進出した。
 
 これは、チャンピオンズ・リーグに出場しているクラブのユースチームによるコンペティションで、文字通り欧州のユース年代における覇権争いを意味する。トッププロになるための登竜門とも言えるだろう。
 ユースリーグ準決勝、バルサはマンチェスター・シティを5-4という派手なスコアで下し、改めて地力を見せた。シティはスピードやパワーに優れた選手が多く、体格で明らかに優勢だったが、バルサは技巧をコンビネーション化し、ボールを完全に支配して撃ち合いを制した。
 
 シティも、トップチームを率いるジョゼップ・グアルディオラ監督の号令によってボールプレーの質は格段に上がっているものの、バルサはそれをものともしなかった。スペクタクルなプレーを追求してきた彼らの面目躍如だったと言える。
 
 その一方で今、「ユースレベルで結果を残しても、上で活躍できない。ラ・マシア(バルサの下部組織の総称)は終わった」という意見も強まっている。
 
 今シーズン、バルサがパウリーニョ、ウスマンヌ・デンベレ、ネウソン・セメド、フィリッペ・コウチーニョという外国人選手に支払った移籍金は、約500億円にも達している。外国人選手への依存を強めているのは間違いない。
 
 かたや、マルク・バルトラ、ジェラール・デウロフェウ、ラフィーニャなど、生え抜きを次々に放出。さらに今シーズン限りでアンドレス・イニエスタの退団が決定的になるなど、ラ・マシアの色は薄まる一方だ。
 
 現在、「ラ・マシア組」で最も年少の選手は、26歳のセルジ・ロベルト。トップチームがラ・マシア組を吸い上げられなくなったことで、アップデートが停滞している。その一方で、アルダ・トゥラン、トーマス・ヴェルメーレン、パコ・アルカセルのようなほとんど稼働しない選手に大金をつぎ込んでいる……。
 
 こういった点から、ラ・マシアが危機的状況にあるのは事実だろう。今、その存在意義が問われている。
 
※UEFAユースリーグ決勝は4月23日(現地時間)に行なわれ、バルサはチェルシーを3-0で下して、2013-14シーズン(第1回大会)以来2度目の優勝を飾っている。

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