長崎はJ1でも快進撃を起こせるのか?「最強の弱者」が重視する4つのポイント

2018年04月25日 藤原裕久

徳永は言う「0-0の時間を長くできれば、走れるウチのほうが有利」

タレントこそいないが、徹底した"弱者の戦い方"で勝ち星を重ねる長崎は自信を付けつつある。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 J1リーグ9節の柏戦で、長崎は3試合連続でのクリーンシートとリーグ3連勝を達成した。この試合で柏に打たれたシュートは15本。対して長崎が放ったシュートは3。粘り強い守備から、セットプレーの一発で得点を奪うという典型的な弱者の戦い方での勝利である。この勝利で長崎は11位に浮上。開幕前にJ2降格の最右翼と目された「弱者」の長崎は、着実にJ1で戦い抜くタフさを身につけつつある。
 
 初参入したJ2で周囲の最下位予想を尻目にJ1昇格プレーオフ進出を達成した2013年。経営危機によるチーム存続の危機にさらされながらもJ1昇格を達成し「奇跡」と評された2017年。これまでも「弱者」として挑んだ年ほど強さを見せてきた長崎だが、それには単なる精神論や運不運ではない、チームスタイルが確立されているという点が大きく影響している。
 
 それは、3バックのシステムや、走力を生かしたハードワークといった戦術の「継続性」と、常に実戦を想定したトレーニングやスカウティングなどの「準備」だ。戦力的に強豪と言えない長崎は、このふたつを妥協なく追求することで、チーム力を高めてきた。
 
 ここに、2016年から取り組んできた攻撃的スタイルへの「変化」と、チームとして戦うための「一体感」が強まった結果が、昨季のJ1昇格だ。この「継続性」「準備」「変化」「一体感」という4つのベースは、今季もブレることはない。
 
「0-0の時間を長くできれば、走れるウチのほうが有利」
 
 これは今季新加入した徳永悠平が、柏戦前に発したコメントだが、高木監督が指揮を執る6年の間、同様の言葉を大勢の選手たちが異口同音に語り続けてきた。
 
「終盤になれば絶対に走り勝てる」「ウチは最後まで全員が走りきれる」「蹴る・(ボールを)止める・走る」というサッカーの基本の内、走ることがどれほど、チーム内に浸透しているかは、この言葉からも十分にうかがうことができるだろう。
 
 また、J参入以来、一貫して3バックを継続していることで経験の蓄積が得やすく、問題が起きた時の修正力が向上している点も見逃せない。6節のFC東京戦に5失点しながら、短期間で守備を改善できたのはその好例だ。
 
「基本的に相手の直近5試合はチェックする」(高木監督)というスカウティングも同様だ。中2日や中3日の連戦下でも、監督とコーチ陣は夜遅くまで映像をチェックし、チームに具体的な戦い方を落とし込めるよう手配を怠ることはない。
 
 そこに、J1でも継続中の攻撃スタイルへの変化が9試合で12得点という結果として表われ、軸となるスタイルの存在がチームの一体感の構築を後押ししていることが、現在の好調へとつながっている。
 
 それでも高木監督は警戒を忘れない。「どこもまだウチを格下だと思っているからね。ここからだよ、大変なのは」。確かにこのまま勝ち続けられるほどJ1は甘くない。単純な戦力で見れば長崎の戦力は最弱の部類でもある。
 
 だが、選手の大幅な入れ替わりや、経営危機などがありながらも、決してブレなかった長崎スタイルを貫く限り、長崎が「最強の弱者」として、リーグに旋風を起こす可能性も十分にある。そう思わずにはいられないのも事実だ。

取材・文●藤原裕久(フリーライター)
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