浦和の柏木陽介が４月21日のJ１リーグ９節、恩師ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が今季から指揮する札幌と対戦する。特別な一戦になりそうだが、柏木は「３連勝と言っても、今の順位（10位）には満足していない。ただ目の前の試合を戦うだけ」と私情は挟まず、"必勝"を誓う。

　加えて、キャプテンとしての自信をつけてくれたという大槻毅暫定監督が最後に指揮を執り、さらに就任が決定したオズワルド・オリヴェイラ新監督も視察に訪れる。それでも浦和の司令塔は、「目の前の試合に高いモチベーションで臨むことが大事。ミシャがどう、大槻さんがどうというのは関係ない。そこらへんは意識しすぎず、ひとつの試合として戦う」と、眼前の戦いだけにただ集中する覚悟だ。実際、大槻監督も「私情を挟まず、目の前の戦いに集中すること」と選手たちに強調していた。

　５節の磐田戦に敗れて堀孝史前監督が解任されたあと、「絶対に諦めない。まだ十分リーグ優勝は狙える」と、柏木は言っていた。そして大槻監督のもとでの３連勝により勝点を11まで伸ばした。それでもまだ首位の広島とは勝点８差と開きがある。

「少し飛び抜けてきた広島に、ここから追い付いていかなければならない。まだ続くこの連戦をどう戦うかが、今後にもつながっていく」

　そのように柏木は首位との差を意識するようにもなった。

　最近は３-５-２のトップ下を務めてきて、「ようやくフィットしてきただけに、仕方ないけど残念な気持ちはある」。今季３人目の監督を迎えることのデメリットも少なからず感じている。ただ、マインドはあくまでも前向きだ。

　こう気持ちを切り替えさせてくれたのが大槻監督だ。何より感謝しているのが、キャプテン像を提示してくれたこと。柏木は言う。
 

「声を出すとかだけではなくて、姿勢のところでね。（大槻）監督が『いこうぜ、キャプテン』という雰囲気を作り出してくれた。みんなでいこう、っていう。だから、これからもそういうスタンスを見せていきたい」

　柏木が現在見せられる最高のパフォーマンスを発揮して、浦和の勝利を収めること。それが大槻監督への恩返しになる。

いや……ミシャがそう簡単に「浦和の10番」に自由を与えるとは思わない。トップ下に対し、ある程度の対策を練ってくるに違いない。浦和対札幌。柏木にとって、今季のターニングポイントになるかもしれない。

取材・文：塚越　始