【リーガ】城彰二の挑戦から日本人選手はどう変わったか? 乾と柴崎が勝ち取った信頼とは?

2018年04月19日 サッカーダイジェストWeb編集部

ベティス戦で敵サポーターから乾が受けた拍手。

15節では、乾と柴崎が始球式に参加。リーガ史上初の日本人対決が実現するか、現地スペインでも注目された。 (C)Getty Images

 乾貴士が交代でグラウンドに入ると、ベティスの本拠地ベニート・ビジャマリンを埋めた観客から拍手と歓声が巻き起こった。まるで地元のヒーローを迎えるように。
 
「良い選手にはここのファンは誰であれ拍手するものだよ」と、私の質問にベティスのキケ・セティエン監督はとぼけたが、乾のベティス移籍は公然の秘密となっている。拍手はベティス・ファンが乾のプレーを楽しみにしている証拠だ。この移籍に疑問の声はほとんどない。
 
 興味深いのは、乾への第一の評価がドリブルやシュートに対するものではなく、献身さやエイバルへの忠誠心に対するものだったこと。スペインのサッカーファンはシャツの色を感じてプレーする選手を高く評価する。この点でどんな試合でも全力を尽くす乾は、「死ぬまでベティス」が合言葉の熱い魂を持つファンをも揺さぶった。「エイバルに忠誠を誓う彼はベティスには来ないのでは……」と心配する声もあったほどだ。
 
 東洋の国からの注目が集まれば、クラブに経済的な利益がもたらさせることはもちろん承知しているが、ファンの関心は戦力として活躍してくれるかどうかだけ。自由契約で移籍金が発生しないという追い風があった反面、貴重なEU外選手枠のうち1つを占めざるを得ないというハンデもあった。

 ベティスという伝統あるクラブ、来季は欧州カップ戦出場を目指す中堅から戦力として求められる際に、日本人であることがプラスにもマイナスにも働かなかったことこそ、乾がリーガでの3年間で勝ち取ったものだろう。
 
 乾が準レギュラーとなるまで少なくとも半シーズン必要だったが、柴崎岳は2部のテネリフェでの経験があったとはいえ、ヘタフェの開幕戦でいきなり先発デビューを飾った。監督に使ってもらうには戦術理解、チームメイトとの呼吸、戦える心と身体という部分で評価されるのが大前提で、日本で高く評価される個人技はプラスアルファに過ぎない。
 
 監督や仲間の求めることを理解するために必要なのは、言葉以上に勘でありセンスである。1年1年積み上げるように成長していった乾に比べて柴崎のセンスは傑出しているように感じる。もっとも、乾のようにファンに尊敬される選手になるにはプレーで心をつかむ必要があり、そこは当然、柴崎には時間が足りていない。

次ページ両者ベンチスタートでも悲観する必要はない。

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