【W杯キープレーヤー解体新書】本田圭佑|チーム全体に自信をもたらす大黒柱

2014年06月14日 ロベルト・ロッシ

世界レベルのフィジカルコンタクトに耐えうる日本で唯一のプレーヤー。

積極的にボールに絡み、難易度の高いプレーに貪欲に挑む。リスクを恐れない傑出したパーソナリティーも、長所のひとつだ。 (C) SOCCER DIGEST

 日本代表のなかで唯一、世界レベルのフィジカルコンタクトに耐え、ボールをキープできるパワーを持ったプレーヤーだ。
 
 強靭な上半身と両足のパワーを活かし、背負ったDFからボールをプロテクトして縦パスを懐に収める。仕掛けの起点となるポストプレーをこなしつつ、敵の2ライン(DFとMF)間で前を向けば、ラストパスやシュートで決定的な場面を作り出す。スルーパスはもちろん、狭いスペースをコンビネーションで抜け出すプレーもお手の物で、短いドリブルでDFをかわしてシュートも放てる。日本が戦術の基本としている中盤でのポゼッションを、決定機に結びつけるためには、本田が持つ高度な個人能力は欠かせない要素だ。
 
 リスクを恐れない傑出したパーソナリティーも、長所のひとつだ。自ら進んで責任を背負い、積極的にボールに絡み、難易度の高いプレーに貪欲にチャレンジする。そして失敗しても怯むところがまるでない。ピッチ上で常に高い集中力とモチベーションを維持し、チーム全体に自信をもたらすポジティブな存在となっている。
 
 短所を探すとすれば、スピード、アジリティー、ダイナミズム、持久力といったアスリートとしてのフィジカル能力が、さほど高くない点か。2ライン間の1対1では、フェイントやテクニックでマークを外してパスやシュートのためのスペースは作れるが、相手を抜き去って裏に飛び出す瞬発力はない。試合の後半になるとインテンシティーが落ちるなど、持久力もいまひとつだ。
 
 では、本田の最適なポジションはどこか。技術的、フィジカル的な特性から見ても、ザッケローニ監督がそうしてきたように、2列目中央で起用するのがベストだろう。
 
 日本代表には本田、香川など足下にボールを要求して、細かいコンビネーションで局面を打開するプレーヤーが揃っている。その反面、裏のスペースを積極的に狙い、敵の最終ラインを押し下げて2ライン間にスペースを作り出すストライカーが不在だった。前田はそれに近いタイプだったが、チームのために動き回るのに精一杯。そこに現われたのが、スペースへの飛び出しが真骨頂の柿谷だ。本田と柿谷の引き出し合いはいまや日本代表の武器のひとつとなっており、若きCFの台頭によって、本田は得意とする2ライン間でのプレーに専念できるようになった。
 
分析:ロベルト・ロッシ
構成:片野道郎

【ロベルト・ロッシ】
1962年3月16日生まれのイタリア人監督。現役時代はMFで、元イタリア代表監督のアリーゴ・サッキや現日本代表監督のアルベルト・ザッケローニに師事。99年に引退し、01-08年はインテルなどでザッケローニのスタッフ(コーチ兼スカウト)。その後は下部リーグで監督を務め、現在はLP2(4部)のフォルリを率いる。

※『ワールドサッカーダイジェスト 出場32か国戦術&キープレーヤー完全ガイド』p36より抜粋。
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