J2最小規模の予算で戦う“相馬ゼルビア”がいまだ今季無敗を継続できるワケ

2018年04月14日 郡司 聡

「監督はすごいところまで見ている」指揮官のチームマネジメントとは?

4月14日現在で4位につける町田。今季いまだ無敗を継続できているワケとは?写真:田中研治

 直近の公式戦であるJ2リーグ8節・熊本戦は、終了間際の同点ゴールで追いつき、町田は開幕から続く"無敗街道"を8に伸ばした。現在のJ2で無敗チームは東京Vと町田のみ。ここまで、なぜ"負けない町田"で在り続けているのか。その理由は指揮官・相馬直樹監督によるチームマネジメントの成果と言えるだろう。
 
 今季の町田はシーズン当初に、6位以内という目標を掲げた。ホームスタジアムのキャパシティ問題や天然芝の練習グラウンドを保有していないことから、町田はJ1クラブライセンスを取得していない。そのため、現時点ではJ1昇格条件を満たしていないが、「43万人の町田市民にクラブへ意識を傾けてもらうためにも」(相馬監督)、成績面ではJ1の昇格条件を満たそうと、クラブは明確な目標を設定した。

 
 6位以内を目指す上で、相馬監督が掲げたチーム作りの方針は、"J1仕様のチームを作ること"。そのための一つの方法論が「あらゆるプレー水準を上げることに尽きる」(相馬監督)である。始動日から新しい方針の下、チーム作りを進める指揮官の指導を受けてきた選手たちからは、「昨季よりも監督から求められるプレーの要求が高くなっている」(平戸太貴)という言葉が多く聞かれる。
 
 最終ラインを高く保ち、前後左右にコンパクトな陣形を維持しながら、前線からのプレッシングで奪ったボールをショートカウンターにつなげるチームスタイルに大きな変化はない。それでも、今季の相馬監督は一つひとつのプレーやチーム戦術を高い水準で実践することにより、勝利の可能性を高めるアプローチへと変化してきた。
 
 開幕からその精度の高いプレースキックで幾多のゴールシーンを演出している平戸は、昨季からの変化について、「守備ではボールを奪うキワの部分を、攻撃では相手の背後を突くことなど、徹底的に相手が嫌がることのクオリティーを高めることを強調されている」と語る。また、今季からチーム主将を務める井上裕大は「監督はすごいところまで見ている」と話した。
 
 ボールを中心とした攻守における約束事と切り替えを重要視するチーム作りの中で、ボールサイドから遠い選手はどこか気を抜く瞬間がありがちだが、仮にボールサイドから遠いポジションにいる選手が次なるプレーへの準備ができておらず、いざ攻守の切り替えが成される際にその出足が一歩、二歩遅れたことでチーム全体のパフォーマンスに支障をきたすことを指揮官は良しとしないため、ピッチに立つフィールドプレーヤーの動き一つひとつに目を凝らしているという。「少しでもサボれば見抜かれてしまう」と井上。極力一滴の水も漏らさない緻密なチーム作りを目指す"相馬イズム"は、一切の妥協を許さない指揮官ならではのこだわりと言えるだろう。
 

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