【W杯キープレーヤー解体新書】アンドレス・イニエスタ|攻撃的MFとしてのクオリティーは世界屈指

2014年06月13日 ロベルト・ロッシ

キープ力の高さはシャビを上回り、最終ラインを崩す能力も高い。

イスコやマタを寄せ付けず、左ウイングの不動のレギュラーとして君臨するイニエスタ。 (C) Getty Images

 シャビ、シャビ・アロンソと並び、バルサ・スタイルのポゼッションサッカーを担うキープレーヤー。3人の中ではもっともアジリティーが高く1対1の突破力をはじめとする攻撃力を備えている一方、守備力はもっとも見劣りする。バルサでは主に左インサイドハーフを担うものの、代表ではシャビ・アロンソとの共存を図るため、ポジションを1列上げて左ウイングとしてプレーする。
 
 とはいえ、中盤でも、前線でも、そのプレースタイルに大きな変化はない。ワンタッチ、ツータッチでボールを捌き、前にスペースがあればドリブルで持ち上がり、最後の30メートルで前を向けば1対1やワンツーで最終ラインの裏に抜け出そうとする。
 
 もちろんチャンスがあればシュートを狙うが、たとえ前線でプレーしていても、フィニッシュを目的としてプレーするアタッカーではなく、よりゴールに近いゾーンで攻撃的MFとしてみずからのプレーに徹する。常に足下にボールを要求し、そこからパスやドリブルで仕掛けるというプレーがほとんどで、オフ・ザ・ボールで裏のスペースにダイアゴナルに走り込むといった、ウイング的なプレーを見せる場面はほとんどない。
 
 その代わり、攻撃的MFとしてのプレーのクオリティーは世界でも指折り。キープ力の高さはシャビをも上回り、2、3人に囲まれてもボールを失わない。他のふたりと比べるとスピードとアジリティーが高く、1対1の突破やワンツーを使い、みずから縦に突破して最終ラインを崩す力がある。
 
 ウイングとして相性のいいセンターフォワードは、足下のテクニックとスピード、アジリティーを備え、狭いスペースの中でも周囲とのコンビネーションでフィニッシュを狙いにいけるテクニカルなタイプ。スペイン代表の中ではF・トーレスよりもビジャがこれに近い。
 
 ビジャなら、コンビネーションでイニエスタを使い、また使われることができるだけでなく、タイミングの良い裏への飛び出しでラストパスを引き出したり、鋭い動きでマークを外してグラウンダーのクロスに合わせたりもできる。
 
 イスコやマタといった優秀な選手を寄せ付けず、不動のレギュラーとしての地位を確立している事実が、イニエスタの偉大さを象徴的に表わしている。
 
分析:ロベルト・ロッシ
構成:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト 出場32か国戦術&キープレーヤー完全ガイド』p23より抜粋。
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