【英国人記者】CL8強で散ったペップ・シティがイングランドで起こしたサッカー革命

2018年04月11日 スティーブ・マッケンジー

奇跡は起こせなかったシティだが……。

2失点目を喫して茫然とするシティの面々。しかし、内容だけを見れば、彼らは勝者と呼ぶに値するパフォーマンスを披露した。 (C) Getty Images

 昨シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)の決勝トーナメント1回戦で、バルセロナがパリ・サンジェルマンを相手に4点差をひっくり返し、サッカー史に残る大逆転劇を演じたとき、私はカンプ・ノウでその奇跡を目撃した。
 
 それから約1年――。私は再び奇跡が起こるのではないかと期待し、エティハドで行なわれたCL準々決勝第2レグのマンチェスター・シティとリバプールの一戦に赴いた。第1レグで3-0とリバプールが大量リードした状況下に置かれたシティは、昨年のバルサに酷似していたからだ。
 
 大逆転を期待していたのは、私だけはなかった。記者室には英国中から著名なジャーナリストたちが集まり、本拠地エティハドに駆け付けたシティ・サポーターたちも試合前から壮観な雰囲気を演出した。何度かシティのホームゲームに足を運んだことがあるが、これほどまでに最高な光景は目にしたことがなかった。

 

 シティ・サポーターたちがここまでの空気感を醸しだしたのは、クラブ史上初の欧州制覇への強い意欲と、3点差を覆すという奇跡への挑戦に燃えていたからだと、私は推測する。
 
 結果から言えば、シティは奇跡を起こせなかった。開始2分でガブリエウ・ジェズスがネットを揺らして逆転への気運は高まったものの、ハーフタイムに判定に対する不満を審判団にぶつけたジョゼップ・グアルディオラが退席処分となり、精神的に追い込まれた。
 
 そして、56分にモハメド・サラー、77分にロベルト・フィルミーノと決められ、突き放されて、万事休した。
 
 あえなく敗れ去ったシティだが、リバプールを追い詰めた攻撃力は十分に魅力的だった。試合後に「前半だけで2、3点取られてもおかしくはなかった」と敵将ユルゲン・クロップが語った通り、シティは敗者に値しないパフォーマンスを披露した。
 
 CL準々決勝第1レグから公式戦3連敗を喫したシティだが、試合後にグアルディオラが「我々のこれまでの10か月間は素晴らしく、特別なものだ」とコメントした通り、彼らが今シーズンでやってきたことに疑いの余地はなく、そのポゼッションスタイルの構築はイングランド・サッカー界における革命であり、誰にも消せない事実なのだ。
 
 今のシティには、心を整理する時間を与えなくてはならない。今シーズンのプレミアリーグを独走し、おそらくタイトルを手にする彼らでさえも、完璧なチームではないのだ。「今日の敗戦で、選手たちは何かの手応えを掴んだかもしれない」と話したグアルディオラの言葉を聞く限り、その真価が問われるのは来シーズンになるだろう。
 
取材・文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)
 
【著者プロフィール】
STEVE MACKENZIE/1968年6月7日にロンドンに生まれる。ウェストハムとサウサンプトンのユースでのプレー経験があり、とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からサポーターになった。また、スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国の大学で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝を飾った。
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