柏のACL敗退は「アジア軽視」が最大の要因。ネルシーニョ時代との差は明白だ

2018年04月05日 鈴木潤

「簡単には勝たせてくれない」指揮官の言葉を聞いて違和感を抱いた

柏はホームでの全北現代戦に0-2で敗れ、大会を去ることに。写真:徳原隆元

「柏から世界へ」をスローガンに、プレーオフから本戦へと勝ち上がった柏のアジア挑戦は、早くも終焉を迎えた。ACLグループステージ第5戦で全北現代に0-2で敗れ、大会から姿を消すことが決まったのである。
 
 全北現代に敗れた試合後の会見で、下平隆宏監督は今大会を振り返り、アジアで勝つことの難しさを口にした。
 
「初戦のアウェーの全北戦、グラウンドが凍っている難しいピッチ状況の中で、2点差を逆転され、非常に難しいゲームを落としてしまった。そういうことが起こり得るのがアジアの大会なんだなと痛感した。
 
 2戦目の天津戦もリードしながら追いつかれてしまう。アジアのリーグチャンピオンが集まっているので、終盤にゲームを動かす決定力を持った選手がゴロゴロいる。そういうタレントにゲームを決められてしまうというのを身をもって感じた。簡単には勝たせてくれない」
 
 だが、この言葉を聞いて違和感を抱いた。「簡単には勝たせてくれない」「ゲームを動かすタレントがゴロゴロいる」とACLで戦う難しさを第1戦と第2戦で痛感したのなら、なぜ"MUST WIN"と位置付けていた傑志戦の2試合では大幅にメンバーを入れ替えて臨んだのか。ホームの第3戦こそ辛うじて途中出場の伊東純也の得点で勝ちきったものの、その翌週の第4戦でも伊東、クリスティアーノ、中村航輔、キム・ボギョン、小池龍太ら主力を外し、その結果90+2分に痛恨の失点を許して0−1というあまりにも痛い黒星を喫した。
 
 もちろん、第1戦の全北現代戦で2点を先制しながら逆転を許したこと、第2戦の天津権健戦であれだけ多くのチャンスを作ったにもかかわらず、その決定機をことごとく逸したこと、さらには終盤の失点が続いたこともグループステージ敗退の原因のひとつである。
 
 しかし、第1戦と第2戦の結果が変わっていなくても、そして今回の全北現代戦に敗れようとも、"MUST WIN"と位置付けていた傑志に2勝していれば、5戦終了時点で柏は勝点7を稼いでおり、少なくともグループステージ突破の可能性を最終節までつなげていたはずだった。
 
 かつてネルシーニョ監督が率いていた2013年に柏がACLでベスト4まで勝ち上がったのは、常にフルメンバーで試合に臨んでいたからだった。グループステージ第5戦で1位によるラウンド16進出を決め、消化試合となった第6戦でも「レイソルがピッチに立つのは勝つため」(ネルシーニョ監督)とメンバーを落とすことなく試合に臨み、敵地でセントラルコーストを3−0で撃破したこともあった。それぐらいの気持ちで戦わなければ、アジアの強豪の集まるACLは勝ち上がれない。
 
 そういう意味では、今年はアジアの戦いを軽く見てしまったことが最大の敗因と言わざるを得ない。
 
 今回のグループステージ敗退の教訓を生かすためにも、リーグ戦では必ず来季のACL出場権を獲得しなければならない。
 
取材・文●鈴木潤(フリージャーナリスト)
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