【現地発】プレミアの“偉人”が達成した大記録! 「世界最高のSB」が歩んだ波乱万丈のキャリア

2018年04月03日 山中忍

アシュリー・コール以上の実力を持つ「世界最高のSB」。

プロキャリアをウィガンでスタートさせたベインズ。当初は小柄なSBがトップキャリアを築くことは難しいと思われていたが、努力を重ねた男はその評価を覆した。 (C) Getty Images

 現地3月31日に行なわれたマンチェスター・シティ戦(プレミア32節)を1-3と落とし、歴然たる実力差を見せつけられたエバートン。そんな彼らにも、「祝うべき要素」が1つだけあった。ベテランSBのレイトン・ベインズが、プレミアリーグ400試合出場を達成したのだ。
 
 試合後、賞賛の声は、優勝へのマジックを「1」に減らした対戦相手に集中。さらにプレミアでは、通算500試合以上に出場している選手が13人いる。それでも、エバートンにとってベインズの記録は特筆に値する。
 
 外国人選手の大挙参入が相次ぎ、英国出身選手の短期間での退団も珍しくなくなった昨今のプレミア。そんな国内リーグで、ファンが「俺らの仲間」と認める地元出身の"1軍11年生"ベインズが、「心のクラブ」で到達したキャリアの節目なのだ。
 

 
 そもそもベインズは、仮に大台に到達していなくても、すでにエバートンの「偉人」だ。140年に及ぶクラブ史上でも、母国開催の1966年W杯の優勝メンバーだった元イングランド代表のレイ・ウィルソンと肩を並べる歴代最高の左SBと認められている。同時期に4つ年上のアシュリー・コールがいなければ、自身の代表デビューが20代半ばの2010年まで持ち越される事もなかっただろう。
 
 最盛期のコールは、国内メディアで「世界最高」とまで言われた左SBだったが、スピードでは先輩に分があっても、スタミナではベインズも負けていなかった。互いに攻撃的だが、クロスの質ではベインズが上回っている。事実、プレミアでの通算52アシスト(32節終了時点)は、DF史上歴代最高の数字だ。
 
 得意の左足はプレースキックでも冴える。代表の番記者間では「ベッカム以来の高精度」と言われていた。2011年に行なわれたFAカップ4回戦のチェルシー戦で魅せた20m強のFKは、当時28歳の名手ペトル・チェフがゴール右上隅に向かう弾道を見送ることしかできなかったほどに美しく、鮮烈だった。
 
 タイトルとは縁の薄いエバートンのシャイなベインズが、スポットライトを浴びる機会は滅多にないが、攻守にハイレベルで安定性のあるSBとして、マンチェスター・ユナイテッドやバイエルンから目を付けられた時期もあった。

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