ブラジルW杯 列強国の開幕直前ポイントチェック|オランダ編

2014年06月10日 クラース=ヤン・ドロッパート

新システムは急ごしらえにしては悪くない。

円熟期のロッベン(右)とファン・ペルシ(左)をリーダーに、ファン・ハール監督がしっかり手綱を握る現チームに、内紛の危険性はまずないだろう。 (C) Getty Images

 いよいよ開幕が迫ったブラジル・ワールドカップ。覇権を争う、いわゆる列強国は、どのような状態で大会を迎えようとしているのか。8つのポイントから現状を診断した。
 
 大黒柱の故障離脱でシステムチェンジに踏み切るなど、ここにきて不安を覗かせているオランダをポイントチェック。
 
【オランダ】
前回大会:準優勝
今大会初戦:6月13日 スペイン戦(グループB)
 
Q1 23人の人選は?
 
可もなく不可もなし
 
 妥当なチョイスだ。ケビン・ストロートマン、ラファエル・ファン・デルファールト、スタイン・スハールス、マルコ・ファン・ヒンケルが怪我でエントリーを断念したが、それを嘆いても仕方がない。
 
 予想外の落選は、パトリック・ファン・アーンホルト。彼のような攻撃的なSBが、このチームにはマッチしていると思ったのだが……。少なくとも、テレンス・コンゴロより有用だったはずだ。
 
 今後を見据えて、23歳のGKイェルーン・ズートを登録し、ワールドカップを経験させてもよかったのではないか。
 
Q2 チームの仕上がり具合は?
 
まずまず
 
 ルイス・ファン・ハール監督が、伝統の4-3-3を捨て、5-3-2へのシステム変更を決断したのは、ストロートマンの離脱と全幅の信頼を寄せられない守備陣の不安が、その大きな理由だ。ただ、新システムの機能性は急ごしらえにしては悪くなく、守備はまずまず安定した。
 
 選手個々のコンディションは上々で、メンタル面にも問題はない。厳格な指揮官が手綱をしっかり握り、心身ともに最高の状態で本大会に入っていけるはずだ。
 
Q3 キャンプインからここまでチームの雰囲気は?
 
まずまず
 
 チームに流れる空気は悪くない。過去に何度も噴出した内紛はその影もなく、選手はひとつにまとまっている。チーム内のヒエラルキーがはっきりしており、控え組はみずからのその立場と役割をきちんと心得ている。
 
 このチームのリーダーはロビン・ファン・ペルシとアリエン・ロッベン。その上からファン・ハールが睨みを利かせている。問題は起こりえないはずだ。新システムも選手たちは受け入れ、不安を漏らす者は皆無だ。
 
Q4 最大の楽観材料は?
 
守備の向上とスナイデルの状態
 
 守備を固めるシステムチェンジの効果は確実に表われており、5人の最終ラインとアンカーのナイジェル・デヨングで構成する守備ブロックはそれなりの強度を得た。
 
 コンディションが不安視されたヴェスレイ・スナイデルは、本番に向けてきちんと合わせてきた。指揮官も、「合宿で最大のポジティブな驚き」とスナイデルを称賛したほどだ。
 
Q5 最大の懸念は?
 
ストロートマンの不在と国際経験の不足
 
 攻守の絶対的な柱だったストロートマンを失った喪失感は、いまなお大きい。その穴を埋められるタレントがいないため、ファン・ハールがシステム変更という手段を講じたのは前述のとおり。
 
 90年代生まれが9人、国内リーグでしかプレーしたことがない選手が10人と、国際舞台での経験が圧倒的に不足している。とくに守備陣に若手が多く、大事な場面で若さが出ないよう祈るばかりだ。

次ページストリート仕込みのスキルとパワフルな一撃。

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