ブラジルW杯 列強国の開幕直前ポイントチェック|イングランド編

2014年06月10日 ドミニク・ファイフィールド

攻撃陣はベストの布陣が見出せないまま。

故障明けのルーニー(10番)の状態は本調子には程遠く、周囲との連係もいまひとつ。気がかりだ。 (C) Getty Images

 いよいよ開幕が迫ったブラジル・ワールドカップ。覇権を争う、いわゆる列強国は、どのような状態で大会を迎えようとしているのか。8つのポイントから現状を診断した。
 
 世界的なタレントを揃えながら、ここ4大会は16強止まりが2回、8強止まりが2回と満足な結果を残せていないイングランドをポイントチェック。
 
【イングランド】
前回大会:ベスト16
今大会初戦:6月14日 イタリア戦(グループD)

Q1 23人の人選は?
 
満足
 
 理想に近いメンバー構成になった。とくに評価したいのが、若手の有望株を数多く選出した点。スティーブン・ジェラードとウェイン・ルーニーをチームの中心に据えながら、その周りを若手で固める。意図がはっきりと感じられるロイ・ホジソン監督のセレクションだ。「勝利という結果」と「長期的視野に立った強化」の両方を満たす人選とも言えるだろう。
 
 注目はロス・バークリーとラヒーム・スターリングの2人。バークリーは創造性、スターリングはスピードで、試合の流れを変える切り札になりうる。
 
Q2 チームの仕上がり具合は?
 
良くない
 
 ベストメンバーで臨んだペルー戦(5月30日)とホンジュラス戦(6月7日)で、攻撃が停滞。本番直前の強化試合でも前線の編成の最適解を見出せなかったのは気がかりだ。得点源として期待されるダニエル・スターリッジとルーニーのコンビネーションも完成されていない。
 
 アレックス・チェンバレンが、膝の怪我で離脱したのも痛い。ホジソン監督は大会中に復帰できると断言しているが、完治までの正確な時間は不明。貴重なアタッカーを一枚欠いたまま、本番を迎える。
 
Q3 キャンプインからここまでチームの雰囲気は?
 
最高
 
 ファビオ・カペッロ前監督時代に比べると、リラックスした雰囲気のなかで強化合宿は進んだ。厳格な性格で知られるカペッロの下では常に張り詰めた緊張感が漂っていたが、今回は選手の表情も柔らかく、過度な緊張感は伝わってこない。若手が多く招集された効果で、活気に満ちているのもプラス材料だ。
 
Q4 最大の楽観材料は?
 
大きくない周囲の期待とプレッシャー
 
 現代表に対する国民の期待は大きくない。グループリーグを突破できなくても、国中が失意の底に沈むようなことはないはずだ。その分、選手たちが余計なプレッシャーを感じずに戦えるのはアドバンテージだ。
 
 前回大会は、国民とメディアの期待に選手たちが押し潰されてしまった感が否めなかった。その二の舞いを演じることは、少なくともないだろう。
 
Q5 最大の懸念は?
 
最終ライン とくにセンターバック
 
 最終ラインは、ガリー・ケイヒル、フィル・ジャギエルカ、グレン・ジョンソン、レイトン・ベインズの4人で決まりだが、バックアッパーに不安が残る。とくに心許ないのがセンターバック。フィル・ジョーンズ、もしくはクリス・スモーリングが出場するとなれば、最終ライン中央の強度は一気に落ちる。
 
 怪我明けのルーニーが、本番前の強化試合で輝きを取り戻せなかった点も懸念材料。大会中にどこまで調子を取り戻せるか、それはチームの命運を左右する。

次ページ特大のポテンシャルを秘めるスターリングとバークリー。

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