R・マドリーの14歳中井卓大は、世界有数のエリート集団でいかに振る舞っているのか

2018年03月31日 中村僚

「サッカーを知っている」という印象を強く受けた

試合によって役割を変化させながらも、精鋭軍団で「歯車のひとつ」であり続けた。それ自体が中井の凄みだ。(C)Getty Images

 3月27日から29日にかけて、神奈川県平塚市と茅ヶ崎市の2会場で「U15キリンレモンCUP2018」が開催された。全8チームが参加し、湘南ベルマーレU-15や大宮アルディージャジュニアユースといった国内の強豪クラブのジュニアユースのほか、レアル・マドリーのカデーテB(U-15に該当)も含まれた。
 
 マドリーには日本人MFの中井卓大が所属している。9歳で加入して以来、順調に昇格を続けている有望株だ。今回の大会にも帯同し、母国でプレーできる機会を楽しみにしているようだった。

 
 大会は4チームずつ2グループに分かれ、上位2チームが決勝トーナメントに進出。下位チームも順位決定戦を行なうため、全チームが3日間で5試合を消化するハードスケジュールだ。筆者は決勝トーナメントの2試合を取材した。世界有数のエリート集団において、中井はどう振る舞い、どのような役割を担ったのか。その様子をレポートしていく。

 
 29日の初戦は準決勝、大宮と一戦だった。マドリーの基本システムは4-3-3で、両ウイングがサイドラインに張り付き、ピッチの横幅を最大限に使う。一方で、ポジションバランスを崩すことも厭わず、大宮のDFラインと中盤の間のスペースを見つけると、即座にライン間に入り込んでボールを受ける。大宮は全体をコンパクトに保っていたが、マドリーの選手たちは易々と前を向いていた。そうした細かいつなぎを見せたかと思えば、最終ラインからロングパス一本で裏に抜け出し、圧倒的なスピードで大宮DFを置き去りにする場面も多々。相手チームが嫌がるところを的確に突く頭脳と実力を示し、6-0の圧勝を飾った。
 
 中井はインテリオール(オフェンシブMF)で先発。筆者はYoutubeの映像などから、ドリブル突破に秀でたスタイルをイメージしていたが、実際は的確なポジショニングとボールの置き位置、プレーの選択によって、チームに円滑な循環をもたらす存在だった。必要に応じてDFラインに降りてビルドアップに参加することも、ライン間で前を向くこともあり、「サッカーを知っている」という印象を強く受けた。
 
 中盤で2選手に挟まれたところを、機転の利いたヒールパスでかわすシーンがあったが、それ以外は特段目立ったプレーをしたわけではない。それでも、日本では到底考えられないほどの強烈な個が居並ぶチームにあって、滞りなく回転する歯車のひとつであり続けた。それ自体が、中井の凄みと言えるだろう。

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