“全力”を出し切れない選手たち…日本代表の悪癖は12年前から変わっていない

2018年03月24日 佐藤俊

官邸や首相の顔色を窺ってばかり仕事している最近の官僚とダブって見えた

"仮想セネガル"のマリ相手にドロー。アピールできた選手はほとんどいなかった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 選手たちは、どこを向いてプレーしているのだろうか。
 
 ハリルホジッチ監督が「今回の2試合はテスト」と明言しているだけに、その言葉が選手の心理面に与える影響は非常に大きいと思う。ただ、それにしてもマリ戦での日本代表の選手たちのプレーはとてもポジティブとはいえないものだった。
 
 ミスしたくない、ボールを失いたくない、勝負しない……。
 
 なんだか官邸や首相の顔色を窺ってばかり仕事している最近の官僚とダブって見えた。特に当落線上の選手は、自分を見せるというよりも、監督の要求通りに動こうとしていた。すると、リスクを負わない、無難なプレーに走りがちになる。そういうプレーをする選手たちが、失うものがなく溌剌と動いていたマリを上回ることは難しい。
 
 安パイなプレーに走るというのは、自分の力を100パーセント出せていないのと同じだ。
 
 それは、今に始まったことではなく、ずっと前から言われ続けている。
 
 2006年のドイツ・ワールドカップでグループリーグ敗退が決まった時、宮本恒靖キャプテンは「力があるのにワールドカップや何かプレッシャーがかかる試合では力を出せない。それを100パーセントとは言わず、アベレージで出せるようにしないと世界では勝てない」と言った。
 
 2014年のブラジル・ワールドカップ、グループリーグで敗退が決まった時、遠藤保仁は「力があるのにやらないし、やろうとすると出せない。能力が高いチームだっただけに、みんながいつもの通りの力を出していればもっと上にいけたはずなのに」と言った。
 
 どちらも言わんとしていることは同じ。
 
 自分の力を常に100パーセント発揮できる選手でないと世界では戦えないし、そういう選手の集合体でないとワールドカップのような舞台では勝てないということだ。
 
 ドイツ大会、ブラジル大会の代表チームは、ともに当時最強と言われたチームで、ワールドカップ前は大きな期待感に溢れていた。ドイツ大会の時は、大会前のドイツ戦で互角の打ち合いを演じ、選手個々が持っている力を出せば、これだけやれるというのを見せた。
 
 ブラジル大会の時もその1年前、オランダに引き分け、ベルギーに勝ち、選手が力を持っているところを見せた。ところがワールドカップ本番ではともに1試合も勝てず、ドイツ大会もブラジル大会も1分2敗でグループリーグ敗退を喫した。力があるのに発揮できない。対戦相手の強さうんぬんの前に持っている力の半分も出せず、自滅したのだ。
 

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