面目躍如の2ゴール! 森岡亮太はいかにしてアンデルレヒトで突破口を見出したのか

2018年02月26日 中田徹

指揮官の要求を具現化した「待ち伏せゴール」

移籍後初ゴールを含む2ゴールに加え、PKを誘発するなど目に見える“結果”を残した森岡。ひとつの分岐点となりそうだ (C)Getty Images

 2月4日のメヘレン戦が、森岡亮太のアンデルレヒトデビューマッチだった。開始10分に左足から鮮やかなクロスを入れて、アシストを記録。しかし、アンデルレヒトというビッグクラブは、背番号10を付けた即戦力に対して甘くはない。20分以降の低パフォーマンス、試合終了間際のPK失敗によって、ベルギーメディアから批判を浴びてしまった。
 
 続くオーステンデ戦でも森岡のプレーは冴えず、とうとう3戦目のSTVV戦はベンチスタートとなってしまった。「僕には時間が必要」と森岡は吐露したが、その"時間"はアンデルレヒトでは極めて短い。だからこそ、25日のムスクロン戦で2ゴールという目に見える結果を残した意味は、きわめて大きかった。

 
 先制点となった1ゴール目は、森岡のゴール前での「待ち伏せ」が決め手となった。最終ラインからのロングフィードを、FWウカシュ・テオドルチュクがヘッドで落とした瞬間、森岡はオフサイドポジションにいた。しかし、テオドルチュクのクサビがMFペーター・ゲルケンスに渡った瞬間、オンサイドポジションになった森岡を、ムスクロンのDF陣は完全にフリーにしてしまった。ワンタッチプレーの連続で相手を"詰んだ"攻撃に、「ずっと練習していた形。(チームとして)そこまで崩し切れた」と喜んだ。
 
 アンデルレヒトでの森岡には「ボールを持たずにチャンスを作る」という要求が与えられている。まさに「待ち伏せ」のゴールは、森岡がチームタスクを果たした上で生まれたものだった。強豪アンデルレヒトの対戦相手は、自陣に引いて守備的に戦ってくるケースが多い。森岡は敵のゴールに背を向けてプレーをすることが多くなり、前を向いてもスペースが見つからなかった。
 
 森岡は、ハイン・ファン・ハーゼブルック監督と戦術について話し合ったという。指揮官が森岡に要求したのは、ボールのないところで走って、そこで相手と1対1の状況を作ることだった。前所属のワースラント=ベベレン時代は、自分がスルーパスを出して、味方の選手にその1対1のシチュエーションを作っていた。しかし、個々のレベルが高いアンデルレヒトでは、どの選手も味方を1対1にするパスが出せる。
 
「いままでは"ボールを持ったところ"から、チャンスを作っていた。いまは、"ボールのない状況"から、(フリーランの)動きだけで攻撃の良い形を作っていく。走った先にボールが来なかったら、もちろん無駄になりますが、アンデルレヒトには出せる選手がいますので」
 
 1点目の「待ち伏せのゴール」は、まさにファン・ハーゼブルック監督が森岡に対して求めていた「ボールのないところでチャンスを作る動き」によって生まれたものだったのだ。
 
「アンデルレヒトに来てから、監督のイメージを自分に落とし込んでいくことをずっと続けてました。それがだいぶ、クリアになってきている感じがします」
 

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