チェルシー対バルサ、9年前の“疑惑の判定”を当時の主審が振り返る「VARがあれば…」

2018年02月19日 サッカーダイジェストWeb編集部

「いくつかジャッジにミスがあった」と認める。

ピケやエトーのハンドが見逃されるなど、いくつかあったミスジャッジにチェルシーの選手たちが激怒。試合は荒れに荒れた。(C)Getty Images

 現地時間2月20日に開催されるチャンピオンズ・リーグ(CL)決勝トーナメント1回戦第1レグでは、チェルシーが本拠地スタンフォード・ブリッジにバルセロナを迎える。

 このスタジアムでのチェルシー対バルセロナといえば、2008‐09シーズンのCL準決勝第2レグを思い出すファンは多いだろう。アディショナルタイムにアンドレス・イニエスタが劇的なアウェーゴールを決め、バルサが決勝進出を決めたあの一戦だ。

 数々の疑惑の判定が議論を呼んだこの試合では、とくに敗れたチェルシーが怒りを爆発させた。ミヒャエル・バラックはトム・ヘニンク・エブレベ主審に詰め寄り、ディディエ・ドログバはテレビカメラに向かって放送禁止用語を叫んでいた。チェルシー・ファンがエブレベ氏を脅迫したというニュースは、その後数年間に渡ってメディアを賑わした。

 あれから9年――エブレベ氏がスペイン紙『Marca』のインタビューで、当時を振り返っている。

 引退後は「もっと自由な時間がほしい」という理由から、審判業にはまったく関わっていないというエブレベ氏は、9年前の試合について、「まったく誇れないレフェリングだった」と反省の弁を述べた。

「本当に、私のベストの日ではなかった。だが、こういったミスは選手や監督同様、主審にもあるものだ。あるべきレベルにない日というのは、だれにでもある。ただ、だからと言って、あの日を誇ることはできない」

 エブレベ氏は「いくつかジャッジにミスがあった」と認めつつ、プライドもうかがわせている。

「長くキャリアを築き、短い間だったが欧州のトップクラスと言われるようになり、少なくとも母国(ノルウェー)ではベストのひとりだったことを誇りに思っている。自分のキャリアはあの試合だけじゃない」

 それでも、9年前の試合は大きな騒動に発展した。試合後、エブレベ氏ら審判団は宿泊していたホテルを変更しなければならなかったという。「CL史上もっともスキャンダラスなレフェリング」とも称されるが、エブレベ氏は「人の意見は変えられない」と述べたうえで、こう続けている。

「例えばレアル・マドリーのファンは、バルサではなくマドリーにとって有利な笛が吹かれた場合でも、"スキャンダラスなレフェリング"と騒ぎ立てるだろうか。私はすべての考え方に敬意を払う。たとえ多くの考えと一致しなくてもね」

 セリエAとブンデスリーガで今シーズンから導入されているVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が当時のCLにもあれば、こういった騒動はなかったかもしれない。

 エブレベ氏は、「VARがあれば、9年経ったいま、こうやってあの試合について話すことはなかっただろう。私のジャッジはいくつか覆っていただろうからね」と、VARに好意的な見解を示した。

「ジャッジがより正しくなるのは、ポジティブなことだと思う。私はVARの導入に賛成だよ」

 それでもエブレベ氏は最後に、「選手が失敗しても何も起こらない。だから、審判のミスも受け入れなければいけない」と主張した。

「残念だけど、(ミスは)起こるものなんだ。サッカーはそれを受け入れなければいけない。少なくとも私はそう考える」

 チェルシーやバルサのサポーター、そしてサッカーファンは、エブレベ氏のコメントになにを思うだろうか。少なくとも、20日の試合では疑惑の判定がないことを願うばかりだ。
 
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