【小宮良之の日本サッカー兵法書】ハリルジャパンが採るべきは「卑屈な戦術」でなく「謙虚な戦術」

2018年01月21日 小宮良之

防戦一方では「じり貧」は必定

あらゆるリスクを考慮する必要はあるが、勝ち上がるためには積極性を失ってはならない。しっかり守って、攻める時は相手DFの脅威となれる。そんな存在を、どれだけ揃えられるだろうか。写真は昨年行なわれたベルギー戦での原口。 (C) Getty Images

  今夏のロシア・ワールドカップ、日本代表はコロンビア、セネガル、ポーランドを相手に、グループステージの3試合を戦う。
 
 日本は第4ポッド。格下であることを認めた上で、戦略を練るべきだ。勝ち目は薄いわけだが、2位以内で決勝トーナメントに勝ち上がる可能性がないわけではない。
 
 わずかな勝機を掴めるか? それを突き詰める作業になる。
 
 誤解を恐れずに言えば、W杯はフットボールのスタイルやら「日本らしさ」やらというものは、あまり意味がない。勝負をモノにするための戦略、戦術、そして幾ばくかの運が必要になる。
 
 日本は正面から相手にぶち当たっても、勝機は巡ってこないだろう。弱い、足りない、劣っている――そこをどう補い、逆転する発想を持てるか。
 
 とはいえ、卑屈になることはないし、なるべきでもない。
 
 昨年11月の欧州遠征、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はブラジル戦で、トップ下として井手口陽介を抜擢している。フィジカルに優れ、防御力が高い井手口をトップ下に置くことで守備力を強化し、あわよくばミドルシュートを、という狙いだったのか。しかし、奇策は通じなかった。
 
 まず、ブラジルの高い技術にいなされ、プレスがハマらない。そして何より、井手口はトップ下の選手ではなく、相手ゴール近くで閃きのあるスキルを出すべきところで、物足りなさを露呈した。
 
 チャンスが広がりそうな場面はあったが、井手口は相手の裏を衝くようなパスを出すどころか、慣れないポジションでボールコントロールすらうまくいかなかった。全く良さを出せずに終わっている。
 
「防御力を高めるために、防御の人数を増やす」
 
 それは戦術の選択肢のひとつだが、上策ではない。なぜなら、守備を厚くしても攻撃のオプションを失ったら、相手に余裕を与えてしまい、勢いのある攻撃をぶつけられ続けることになる。防戦一方では、じり貧は必定だ。
 
「攻撃の選択肢は残しつつ、防御を固める」
 
 それが日本の、ロシアでの「正攻法」となる。

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