【現地発】英国で物議を醸すビデオ判定の有無――いま、審判に求められることは何か?

2018年01月16日 山中忍

イングランドで試験的に導入されたVAR判定への反応は?

問題となったワトフォードのドゥクレが決めた決勝点のカット。ボールは明らかに右手に当たっている……。 (C) REUTERS/AFLO

 両腕を広げて立ちはだかるサウサンプトンのGKアレックス・マッカーシーの眼前で、果敢に攻め上がったワトフォードのボランチ、アブドゥライ・ドゥクレは、右手を使ってボールをそらし、値千金の同点弾を決めた――。
 
 現地1月13日に開催されたプレミアリーグ23節のサウサンプトン戦(△2-2)で、試合終了間際にワトフォードが、"劇的"に追いついた場面は見ていた誰もが、「プレミアにもビデオ判定が導入されていれば……」と思わざるを得ないシーンだった。ゴールを演出したワトフォードのFWトロイ・ディーニーでさえ、試合後に「ビデオ判定があれば無効だっただろうな」と認めていたほどだ。
 
 英国内では、本来なら扱いが小さかったであろう両軍対決は、大衆紙のみならず、高級紙でも写真付きで一面を飾った。各紙のマッチレポートには、サウサンプトンの勝利が「強奪された」といった類の表現が目立った。
 
 イングランドではビデオ判定システム(VAR)の試用が、プレミアリーグのクラブも参戦する年始のFAカップ3回戦から始まった。その反応は概ね良好だと言っていい。導入の初戦となった1月8日のブライトン対クリスタルパレス(2-1)でも、終了間際に生まれた決勝ゴールの正当性がVARによって確認されている。
 
 だが、単純に、勝敗の行方を左右しかねないグレーな判定に白黒がつけば良いというものではない。半ば興ざめしながらそう感じたのは、1月10日、こちらもトライアル対象となっていたリーグカップ準決勝第1レグのチェルシー対アーセナル(0-0)でのことだ。
 
 この試合、ビデオ判定の適用は4回もあったのだが、そのうち2回は、映像による判定確認が妥当だと言えた。
 
 40分にアーセナルのエインシュリー・メイトランド=ニールズが、ビクター・モーゼスと競り合って倒れた場面は、肉眼ではPKかに思われた。逆に、89分にはチェルシーのセスク・ファブレガスがダニー・ウェルベックからのプレッシャーを受けて倒された。しかし、いずれもPKの判定は下らなかった。これを受け、アントニオ・コンテとアーセン・ヴェンゲルの両監督も、テクノロジーによって確認された判定に不服はない様子だった。
 

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