J1王者の"追われる立場"を中村憲剛はどう捉えているのか?昨季とは「かなり違う」と明かしたポイントは

2018年01月15日 江藤高志

中村は言う「(チーム内の)競争もありますが、それ以上に共闘」

チャンピオンとして挑む新シーズンは、ACLを含めた4冠を狙う。そのための準備は着々と整っているようだ。(C)SOCCER DIGEST

 優勝を確信し崩れ落ちる中村憲剛の涙が15年分の思いの深さを伝えていた。その強烈な光景を目の当たりにしたからこそ、逆転優勝の喜びは大きかった。クラブ史上初めて、スタジアム中が笑顔でシーズンを終えたその様子を中村は大事なものとして報道陣に伝えた。サポーターを大事にする彼らしい発言だった。
 
 シーズンオフを忙しく、そして充実した状態で過ごした中村が戦いの日々に帰ってきた。春季合宿で新シーズンの練習をスタートさせた川崎フロンターレにとって、2018年はチャンピオンチームの称号を胸に、臨むシーズンとなる。その合宿初日に、中村に意気込みを聞かせてもらった。
 
 まず聞いたのが、J1王者として初めて追われる立場として迎えるシーズンになる、との質問。この問いに対し中村は、2017年シーズンとの決定的な違いを口にした。中村は「オニさん(鬼木達監督)が2年目だということ」と述べ、言葉を紡いで行った。

 最終節に首位にまで上り詰めた、という意味で右肩上がりのシーズンとなった昨季については「去年は(監督が代わり)僕らも構えてるところはありましたし、オニさんも手探りのところはあったと思います」と振り返る。手探りの戦いでありつつも、サッカーの内容については鬼木監督とコミュニケーションは取れており「手応えはあった」という。

 手応えを感じつつ構築を進めた2017年の川崎のサッカーは、自チームのサポーターはもちろん、サッカーの内容に対し目の肥えた他チームの選手をも魅了する完成度に到達。鬼木監督2年目の今季は、その完成度に近い地点からはじめられるという意味で違いがあると中村は話す。
 
「(タイトルを取れた)去年をベースにして、今年はより質を上げていこうと。今年は最初からそれができるのはかなり違うかなと思います」
 
 質を上げ、リーグ連覇を含めた国内三冠を視野にACLをも狙うチームは果敢な補強を敢行。1年での復帰となった大久保嘉人に加え、合宿初日に唐突に発表された齋藤学の移籍は川崎はもちろん横浜のサポーターを驚かせた。
 
 この結果、中村ですらポジションを争う環境を強いられることになるが、ハイレベルなチーム内競争については「去年一年で痛感したと思うんですが、4つのタイトルを全部狙いに行くにはこれくらい揃えないといけないという反省はフロントやスタッフにあったのかもしれないですね」と冷静に受け止める。さらに競争について「選手として当たり前」と話すが、中村のスタンスは競争よりも「共闘」に軸足を置いたものに。「競争もありますが、それ以上に共闘というか、みんなでやっていくことが大事になる」と述べている。
 
 他チームから徹底的に研究され、追われる立場となった今季ではあるが、中村は彼が手にしてきた15年分の経験をフル動員して、国内三冠にACLを加えた厳しい戦いを進めていく覚悟でシーズンに臨んでいる。

取材・文●江藤高志(川崎フットボールアディクト編集長)
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