【番記者通信】モウリーニョ再任1年目は、織り込み済みの無冠|チェルシー

2014年05月16日 ダン・レビーン

堅守速攻の堅守は出来上がっても…。

頼れるストライカーの不在が響いた今シーズンの無冠は、モウリーニョにとっていわば想定通り。来シーズンは強いチェルシーが見られるか。 (C) Getty Images

 ジョゼ・モウリーニョに本音で今シーズンを振り返らせたら、こう言うはずだ。
 
「だから言ったじゃないか」
 
 チェルシーへの帰還が決まった瞬間から、モウリーニョは"火消し"に奔走してきた。静めようと躍起になったのは、優勝を期待する周囲の声だ。
 
「我々にはその力はない。バランスを欠いている」
 そう言って、プレミアリーグもチャンピオンズ・リーグも優勝の可能性を否定した。
 
 お得意の権謀術数だと、誰もモウリーニョの謙虚な発言を取り合わなかったのは、チェルシーが好スタートを切ったからだった。2列目のタレント陣のスピードとテクニックを最大限に活かした攻撃サッカーは、破壊力と魅力に富んでいた。冬の移籍市場で放出することになるケビン・デ・ブルイネも、開幕当初はワールドクラスに見えたほどだ。
 
 しかし、モウリーニョの言葉は本当だった。結局、無冠に終わった結果が、なによりの証明だ。
 
 致命的だったのは、頼れるストライカーの不在だ。昨年12月、アウェーでストークに敗れた(2-3)後に、こんな一件があった。あるスクープ映像で、隠しカメラに捕えられたモウリーニョは、3人のストライカー(サミュエル・エトー、フェルナンド・トーレス、デンバ・バ)のいずれにも失望していると、そう語っていた。
 
 ちょうどその頃から、モウリーニョは戦い方を変えている。ディフェンスをタイトにし、カウンターから一発を狙う守備型へのシフトだ。冬の移籍市場では、ファン・マヌエル・マタを放出して、大型ボランチのネマニャ・マティッチを獲得。中盤の強度を上げる補強だった。
 
 守備型にシフトしたものの、チームは徐々に失速していった。堅守速攻の堅守は出来上がっても、速攻が思ったように機能しなかったからだ。前線でボールを収めて押し上げを助けながら、カウンターを締めくくるストライカーの不在がやはり響いた。
 
 今シーズンの無冠は、織り込み済みのモウリーニョ。今オフには頼れるストライカー(アトレティコのジエゴ・コスタ?)を手に入れて、きっと来年のいまごろは、笑顔でシーズンを振り返っているはずだ。
 
「だから言ったじゃないか」
 
【記者】
Dan LEVENE|Fulham Chronicle
ダン・レビーン/フルアム・クロニクル
チェルシーのお膝元、ロンドン・フルアム地区で編集・発行されている正真正銘の地元紙『フルアム・クロニクル』のチェルシー番。親子三代に渡る熱狂的なチェルシーファンという筋金入りで、厳しさのなかにも愛ある筆致が好評だ。
 
【翻訳】
松澤浩三
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