“出稼ぎ”テベスをボカが再獲得した理由は? 全ては王座奪還のためのシナリオだ

2018年01月11日 サッカーダイジェストWeb編集部

テベスだけでなく、代表クラスの選手を補填。

ボンボネーラでの会見では、中国でのプレー時にはほとんど見せなかった笑顔を見せたテベス。 (C) REUTERS/AFLO

 約1年に及ぶ中国でのプレーを経て、愛すべきベテランが、古巣を南米王者に導くために再び舞い戻った。
 
 現地1月9日、ボカ・ジュニオルスは、上海申花との契約を解除し、フリーの立場となっていた元アルゼンチン代表FWのカルロス・テベスの加入発表会見を行ない、正式にサインを交わした。
 
 時折、白い歯をこぼすなど、終始、落ち着いた表情で会見を終えたテベスだが、この一年は決して楽なものではなかった。
 
 2015年の夏にユベントスから、ユース時代を過ごすなど愛着のあるボカへ復帰したテベスは、チームに国内リーグタイトルをもたらす活躍を見せたが、「子どものために病院へ一緒に行くこともできない。俺は普通の生活を送りたい」と、国内屈指の人気クラブのスター選手であるがゆえの悩みを吐露。その苦しみから脱するように、2016年12月、2年契約で上海申花に電撃加入した。
 
 しかし、言葉も違えば、文化も違う中国で、テベスはやはり苦しむ。太りすぎを指摘されるなど、コンディション不良から公式戦でわずか4ゴールを挙げるに止まり、さらに事あるごとにアルゼンチンへの想いを口にすることから、現地で「ホームシック少年」と揶揄された。
 
 結局、世界最高額となる週給72万ユーロ(当時のレートで約8900万円)という大金を捨てる形で、テベスは上海申花を離れ、今回、ボカに再復帰を果たしたわけだ。
 
 1年間で手にした額は単純計算で約42億円。引退後に3人の子どもを十分に養っていけるだけの金額である。ボカにそれだけの大金を払える見込みがないことを考えても、テベスは中国へ一時的に"出稼ぎ"に行っていたと捉えるのが妥当かもしれない。
 
 何はともあれ、テベスは「俺の夢はボカでの引退」と語るほどに愛着のあるクラブに戻ってきた。ダニエル・アンジェリッシ会長とともに登場した会見では、「勝利であり、敗北でもある」と中国での失敗を認めつつ、古巣での活躍を誓っている。
 
「後悔はない。こうなる可能性があることも知ったうえで、中国行きを決めたんだ。あと2年だ。その間、ボカでのプレーを楽しみたい。それこそが、俺が最後にやり残したことだ。気分は良いし、幸せなら、楽しむのはずっと簡単になる」

次ページ「俺は南米制覇をするために戻ってきた」(テベス)。

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