なぜ、このタイミングだったのか? 井手口陽介が欧州移籍を決断した理由

2018年01月05日 サッカーダイジェストWeb編集部

「向こうに行って『アイツ消えたなあ』って思われないように頑張りたい」

井手口を突き動かしたのは、成長したいという強い欲求だ。写真:川本学

 アカデミーの先輩に当たる宇佐美貴史がかつて「ポテンシャルは怪物級」と評した逸材が、海を渡る決意をした。
 
 1月4日にリーズ・ユナイテッドへの完全移籍が発表されたガンバ大阪の井手口陽介は、英国の労働ビザの取得の成否に関わらず、まずはスペイン2部のクルトゥラル・レオネッサに期限付き移籍。スペインの地から新たな挑戦を始めることになった。
 
 プロ4年目の昨年は、「代表はまだ早いと思っていた」という本人の思いとは裏腹に日本代表に選ばれ、ワールドカップアジア最終予選でも躍動。ロシアへの切符をほぼ手中にするハイパフォーマンスを見せていたにも関わらず、21歳の若武者はあえて、このタイミングでの海外挑戦を決断した。
 
 山内隆司社長も同席した記者会見では、当然ながらワールドカップを半年後に控えたこの時期での移籍を懸念する質問も飛んだ。
 
 環境を変えることにはリスクもあるが?
 問われた井手口は迷うことなく、キッパリと言い切った。「ワールドカップにはもちろん行きたいが、そういうのは何もない状態にして自分の思うままにできたら一番いいと思った」。
 
 井手口を突き動かしたのはプレーヤーとして成長したいという欲求だ。
 
 G大阪ではジュニアユース時代から常に飛び級で活躍し、リオデジャネイロ五輪にもチーム最年少で出場。順調すぎるスター街道を歩んで来た逸材は日本代表でも定位置を確保した感があるが、井手口が早急にさえ見える海外移籍を決断したのは日本代表の一員として挑んだ昨年11月の欧州遠征がきっかけだ。
 
 ブラジルに1-3で惨敗し、主力不在のベルギーには0-1で敗戦。欧州の芝を知らない井手口はピッチへの適応にも苦労を見せるなど、本来のパフォーマンスを見せきれなかった。
 
「ブラジル戦とベルギー戦で、世界のトップの選手たちと試合をして、実力の差を見せ付けられ、すごく悔しい思いをした。その差をどれだけ縮められるかが、これからサッカーをする上で大事だと思ったので、少しでも早く海外に行きたいという気持ちが強くなりました」
 
 海外移籍を決断したきっかけを率直に振り返った井手口は、球際の激しさやパススピード、攻守の切り替えなどすべてにおいて世界基準にほど遠いJリーグでのプレーに限界を感じていたのは間違いない。
 
 海外移籍は常にリスクと隣り合わせであることは井手口も自覚済み。海外でさらなるブレークを果たす選手もいれば、出場機会に恵まれず、日本代表からも遠ざかる選手も決して珍しくはない。
 
「向こうに行って『アイツ消えたなあ』って思われないよう、皆さんに良いニュースを届けられるよう、しっかり頑張っていきたいです」
 
 その言葉には自らに対する自信と、確固たる決意が感じ取れた。
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