【選手権】全国に返り咲いた14年王者の星稜が見せた、名門たる所以の“修正力”

2018年01月01日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「なんべんも言った」ある動きから決勝点に。

2年ぶりとなる選手権で星稜は、西部⑬の決勝ゴールで松山工を下した。写真:田中研治

[高校サッカー選手権1回戦]星稜 1-0 松山工/12月31日/オリプリ
 
 かつて本田圭佑を輩出し、2014年には頂点に辿り着いた名門の星稜が、2年ぶりとなる選手権の初戦で松山工を1-0で下した。だが試合後、河﨑護監督はため息をもらすように、こう口を開いた。
 
「いやー緊張しましたね。(選手たちは)硬かった。覚えていないけど、初出場のような雰囲気かなって、思ったね。前半はミスが多かった。それも小学生が起こすような。だから、『落ち着いてくれ』と、心の中で祈るばかりでした」
 
 たしかに前半、イエローのユニホームを着た選手たちは、どこか慌てていた。すると、相手のCB志摩奎人のフィードから、何度も縦に早い攻撃を食らう。この日、最大のピンチもミスから与えたFKで、あわや失点の場面もあり、指揮官が嘆いたのも頷ける。
 
 しかし、後半に入ると、チームはガラリと変わっていた。前半とはうって変わって選手たちが躍動。後半12分には岩岸宗志のクロスから、西部悠大が決勝ゴールを挙げた。松山工の圧力を撥ね退け、2回戦へと駒を進めている。
 
「まあ、内容はなかったので、ホントに勝っただけ。内容なんて、二の次、三の次、四の次くらいですよ。『頑張れ、走れ、詰めろ、声出せ』とか、こういうことだけです。(本当は)結構言ってきたんですけどね。でも、そういう指示しか出していないです」と勝利した河﨑監督は少しおどけながら謙遜するが、「ハーフタイムの具体的な修正はありましたか?」と聞けば、声色を変えて緻密な分析を明かしてくれた。
 
「ディフェンスラインと中盤の間が空いていたので(埋めた)。攻撃の幅が狭く、左サイドに偏っていたので、左右両方からオフェンスを組み立てました。だから、活性させた右サイドからのゴールでしたね。あと、練習では『(2列目から)斜めに走ってボールをどれだけ引き出せるか』というトレーニングをしている。だけど、今日はなかなか出てこなかったから、そこは言いました。なんべんも言いました」
 
 指揮官が言うように、後半は最終ラインの押し上げからプレスが連動し、起点となっていた相手CBの志摩に自由を与えなかった。また、2シャドーの高岸憲伸と岩岸が2列目から飛び出して左右のサイドを打開し、幾度となくチャンスを作っていた。
 
 まさに、名門たる所以の"修正力"と言えるだろう。昨年に選手権の切符を逃し、返り咲いた全国の舞台で「私自身も硬く、余裕がなかった」とも河﨑監督は言うが、「(2014年に選手権を制した)あの時をイメージしながら作った」チームには今後の戦いにも期待が持てそうだ。
 
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