ヨーロッパリーグ決勝で描かれた両チームの残酷なコントラスト

2014年05月15日 サッカーダイジェストWeb編集部

セビージャの街にも実に対照的な光景が――。

PK戦でGKベトが活躍。殊勲の守護神は「PKは予測不可能なもの。今回は僕らに運が味方した」と語った。 (C) Getty Images

 ヨーロッパリーグ(EL)決勝は、セビージャがスコアレスからのPK戦を4-2で制し、連覇を遂げた2006‐07シーズン以来、史上最多タイとなる3回目の優勝(UEFAカップ時代を含む)を飾った。
 数々の幸運やドラマチックな展開によって悲願のタイトルを勝ち取ったセビージャ、そして悪しき伝統を止めることができずに惜しくも敗れたベンフィカの、ここまでの歩みを振り返る。
 
◇セビージャ、棚ぼたからの最多優勝
 
 本来はこの舞台に上がる権利すら有していなかった。
 
 昨シーズンのリーガ・エスパニョーラでの順位は9位。EL出場権は7位のベティスまでだったが、6位のマラガが税務局への債務不払いにより出場権を剥奪され、さらに8位のラージョ・バジェカーノが給料未払いなどでFIFAライセンスを取得できなかったことで、繰り上げでセビージャに出場権が転がり込んできた。
 
 昨シーズンまでの中心選手だったアルバロ・ネグレードとヘスス・ナバスをマンチェスター・シティに売却するなどチーム改革を施したことで、シーズン前には未知数な部分も多かったセビージャだが、補強した選手の多くが大当たり。特にケビン・ガメイロはシーズン序盤から得点を量産して後にチーム得点王(15得点)となり、同じく新加入組のカルロス・バッカもこれに続く(14得点)活躍を見せ、チームの上位(最終節前の時点で5位)進出に大きな貢献を果たしていくこととなる。
 
 ELでは、予選3回戦から登場したセビージャ。東欧の2クラブを難なく下し、進んだ本戦のグループリーグでは3勝3分の首位で決勝トーナメントへ進出する。1回戦ではマリボル(ポルトガル)に僅差で勝利し、2回戦ではベティスとのダービーマッチが実現。ともにアウェーで2‐0と勝利し、敵地でPK戦に突入すると、ファーストキッカーが失敗するも4‐3で制して、準決勝ではポルトをホームでの大勝(4‐1)で下した。
 
 そして準決勝のバレンシア戦。ホームで2‐0で先勝するも、アウェーで3点を奪われてロスタイムへ。敗戦を覚悟した矢先、ステファン・エムビアの奇跡的なゴールが生まれ、アウェーゴールの差で決勝進出を果たし、敵地を沈黙させたのだった。
 
 決勝では、守備の国イタリアでの開催だったからというわけではないだろうが、ともに死力を尽くした120分間でゴールは生まれず、セビージャが連覇した06‐07シーズンと同様、決勝でのPK決着となった。ここでは、ベティス戦同様の活躍で、GKベトが2人をストップ。セビージャは優勝回数3回に達し、ユベントス、インテル、リバプールという強豪と肩を並べたのだった。
 
「選手が見せた献身的なハードワークは素晴らしかった。優勝に相応しいチームだった」とウナイ・エメリ監督は、7年ぶりの戴冠を喜んだ。
 
 トリノから待ち望んだ朗報を受け、無数のファンが街頭にくり出し、深夜遅くまで歓喜に浸る。ベティスがリーガの最下位に沈んだことで、実に極端なコントラストが描かれたセビージャの街であった。
 

次ページ「三度目の正直」で臨んだEL決勝だったが……。

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