「W杯出場」選手はどれだけ儲かる?――W杯とお金の話 vol.3

2014年05月15日 週刊サッカーダイジェスト編集部

サプライズで選ばれれば、それだけで価値は跳ね上がる。

  ワールドカップに出場することは、プレーヤーとしての名誉以外に、金銭的な〝うま味″を引き出すものなのか? 複数の業界関係者の証言をもとに、現役時代と引退後における「ワールドカップ出場」という肩書きの値打ちを探ってみた――。
 
 
「ワールドカップ出場」という肩書きは、選手にどれほどの付加価値をもたらしてくれるのか。
 
 4年に一度のワールドカップには、その国の限られたトップレベルの選手しか出場できないだけに、彼らは当然ながら相応の実力者であり、移籍市場での価値も上がり、年俸の交渉でも少なからずメリットはあるだろう。つまり、純粋にプレーヤーとしてのバリューは上がるということだ。
 
 だからといって、CM出演などメディア露出を含め、広告面での副収入も増えるかというと、ワールドカップに出場しただけではほとんど期待できないという。確かに、日本が初めてワールドカップに出場した98年当時で考えれば、状況は今とは違っていただろう。
 
 だが、すでに今回のブラジル大会で5度目の出場となる日本では、ワールドカップは「出て当たり前」という風潮がある。ある大手マネージメント事務所のスタッフも「『出ただけ』では、インパクトは弱いですね」と語る。メンバーに選ばれるだけでは、付加価値とはならないようだ。
 
 では、「ワールドカップ出場」という肩書きが、その効力を発揮するのはどんな場合においてなのか。別の事務所関係者は「本大会で得点王になるとか。ハットトリックでもいいかもしれません。それぐらいのインパクトがあれば、選手の売り出し方でも、また違った展開の見通しが立ちます」と分析する。
 
 ただし、ワールドカップで目立った活躍がなくても、「ワールドカップ戦士」として注目を浴びる方法がないわけではないという。
 
「サプライズ招集ですね。これまで代表での実績がなくても、本大会で活躍してなくても、サプライズで選ばれればそれだけで価値は跳ね上がります」(前述のスタッフ)
 
 要は、どれだけメディアに取り上げられ、サッカーファン以外の人たちにもそのイメージを刷り込ませることができるか。それが付加価値を高めるためのひとつの基準となっているようだ。
 
 ちなみに、日本中が注目するようなビッグイベントの前後の時期は、出場する代表選手や代表監督が自著を出版するビジネスチャンスでもある。ただし、関係者によれば、一部のベストセラーを除けば「本の売り上げは正直、大した額にはならない」らしい。それよりも、本を通じてまずは選手の知られざる人柄や魅力を広く認知させ、金銭的なメリットにつながる展開はそれから、というのが一般的な戦略のようだ。ワールドカップ、あるいはオリンピック前は副収入を見込めるタイミングではあるが、自著の出版による利益回収は時間がかかる作業と言えるだろう。

次ページ引退後は肩書きによって仕事が決まるケースはあるが…

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