バルサ育ちのMFとサンチャゴ・ベルナベウの“幸福な関係”

2017年12月25日 下村正幸

「気持ちよくプレーできる」と本人も“敵地”との相性の良さを認める。

スアレスの先制弾をアシストするなど、S・ロベルト(左)は今回のベルナベウ・クラシコでも攻守に奮闘。この“敵地”でプレーするたびに、選手としての格を上げている印象だ。

 リーガ・エスパニョーラにおいて、クラブ史上初めてアウェーのクラシコで3連勝を飾り、サンチャゴ・ベルナベウを得意にすらしている近年のバルセロナ。その3連勝に大きく貢献し、個人レベルでこの宿敵レアル・マドリーのホームスタジアムと相性がいいのが、セルジ・ロベルトだ。

 2011年4月、チャンピオンズ・リーグ(CL)の試合に初めて出場したときの舞台がサンチャゴ・ベルナベウなら(出場時間は1分)、バルサの選手としてその名をスペイン全土に轟かせたのもこのスタジアムだった。

 舞台は2015年11月21日、2015‐16シーズンのクラシコ。当時のルイス・エンリケ監督から故障明けのリオネル・メッシの代役として右ウイングのスタメンに抜擢されると(メッシはこの試合の後半に戦線復帰)、物怖じしない堂々としたプレーを披露した。後方のダニエウ・アウベスのカバーリングに奔走しながら、中盤のポゼッションに貢献し、さらには11分のルイス・スアレスの先制ゴールをアシストと、攻守両面で大車輪の働きを見せ、4-0の大勝に貢献したのだ。

 3-2で勝利した昨シーズンの"ベルナベウ・クラシコ"で、メッシの勝ち越しゴールのきっかけを作ったのもS・ロベルトだった。残り数秒となったロスタイム、スピードに乗った力強いドリブルで対峙するマルセロを振り切り、敵陣までボールを運ぶと、アンドレ・ゴメスに託したボールは、ジョルディ・アルバを経由してメッシに渡り、あの劇的な決勝弾が生まれている。

 サンチャゴ・ベルナベウについては、「気持ちよくプレーできるスタジアム」と本人もその相性の良さを認めている。そして今回のクラシコでは、右サイドバックとしてスタメン出場。前半こそ対面のマルセロや、左サイドに流れてくるクリスチアーノ・ロナウドの対応に苦しむ時間帯があったが、後半に入ると、チームに推進力を与える持ち前の攻撃力を存分に発揮した。

 54分には、中央を持ち上がるイバン・ラキティッチから受けたパスをダイレクトで折り返し、ルイス・スアレスの先制ゴールをアシスト。奇しくも2シーズン前と同じコンビによる得点となった。これはS・ロベルトにとって今シーズン5本目のアシスト。リーガ全体では、チームメイトのジョルディ、バレンシアで売り出し中のウイング、ゴンサロ・グエデスと並んで3位タイの数字である。

 今回のクラシコでは、76分にネウソン・セメドが途中出場すると、S・ロベルトのもうひとつの大きな武器である万能性を発揮。左のサイドハーフにポジションを上げ、91分に交代で退くまで精力的なプレーで中盤を支えた。

 試合後、S・ロベルトは先制ゴールの場面をこう振り返った。

「あのカウンターの場面、ボールを持つイバン(ラキティッチ)の向こうに、並走してファーポストに走り込むルイス(スアレス)の姿が見えていた。イバンからパスが来たときは、相手のディフェンダーの間にパスを通すことだけを考えていたよ。我ながら完璧なコースに決まった。あとはルイスがいつも通りに決めてくれたよ」

 S・ロベルトは以前、サンチャゴ・ベルナベウについてこうも語っている。「これからもいい思い出を作っていければいいね」と。今回のクラシコでは、まさにその望み通りの活躍で勝点3の獲得に貢献。チームとともに、最高の形で2017年を締めくくった。

 2年前のベルナベウ・クラシコがキャリアアップのきっかけとなった試合であるとすれば、今回のクラシコはS・ロベルトにとって、バルサの中心選手として成長しつづけている姿を世界に見せつける舞台になったと言えるだろう。

文:下村正幸
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