新監督招聘で横浜はどう変わるのか? 豪州をW杯に導いた熱きモチベーターが見据える先

2017年12月20日 藤井雅彦

交渉の序盤、ポステコグルー氏が古川社長に対して行なった逆質問とは?

前豪州代表監督のポステコグルー氏が横浜の新監督に就任。Jリーグで初めて指揮を執る。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 12月19日、横浜F・マリノスは来季の新監督としてアンジェ・ポステコグルー氏と基本合意したことを発表した。古川宏一郎社長は「優勝を目指し、同時に若手を育成できる監督」という2点を主な選考基準にして人選を進め、辿り着いた結論が元オーストラリア代表監督のポステコグルー氏だった。
 
 選考の過程で「複数の候補者と会った」と明かした古川社長。ターゲットを最初からひとりに絞るのではなく、シティ・フットボール・グループ(以下、CFG)が持つ世界的なネットワークを活用しながら、複数の候補者をふるいにかけていく手法で確度の高い人選を行なった。結果として、つい先日のワールドカップアジア最終予選で日本のライバルチームを率いた馴染みある監督に決まったが、外資と資本提携する新時代のクラブが日本人監督にバトンを渡す確率は限りなくゼロに近かった。
 
 では今回の監督交代によって横浜のサッカーはどのように変わるのか。この疑問について編成を担当するアイザック・ドル スポーティングダイレクター(以下SD)は「新しい監督が来たからすべてが新しくなるわけではない」と説明。マイナーチェンジはあっても、根本の部分では変わらないスタイルを築くこと。これが横浜、あるいはCFGが掲げる方向性である。
 
 ただし、システムについては流動的な面もあるだろう。オーストラリア代表をロシア・ワールドカップ本大会へ導いたポステコグルー氏は、同代表で4バックと3バックを併用。対戦相手によってシステムを柔軟に使い分けていた。当時の代表選手であり、横浜に籍を置くミロシュ・デゲネク曰く「彼はモチベーターで熱い監督。試合中は常にピッチのすぐ横に立っている。そして彼は複数の戦術を持っている」。基本的には現行の4バックになる可能性が高いが、陣容が固まらない現時点で明確なことは言えない。
 
 交渉の序盤、ポステコグルー氏は古川社長に対して「クラブとして優勝を目指していますか?」と逆質問したという。このエピソードだけでも、彼が勝利に対して並々ならぬ情熱を持っていることが分かる。システム云々は結果を求める過程の方法論に過ぎず、来季の陣容が出揃ってから、お手並み拝見といきたい。
 
 アイザック・ドルSDは取材陣に対して「目標は高い。チャンピオンになりたい。目指すのはエベレストです」と文字通りの"世界最高峰"になぞらえて目標を公言した。狙うのは今季の『ACL出場権獲得』よりもはるか上にある『優勝』のみ。エリク・モンバエルツ体制の3年間で築き上げたスタイルをさらにブラッシュアップし、ポステコグルー新監督とともに頂点だけを見据える。
 
取材・文●藤井雅彦(ジャーナリスト)
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