逆転劇を演出した韓国のシン・テヨン監督。昨年の"ドーハの悲劇"が原動力に

2017年12月17日 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB)

「今思えば財産になったと感じている」(シン・テヨン監督)

現在はA代表を指揮するシン・テヨン監督。過去にはU-23とU-20の韓国代表監督を歴任するなど、豊富な実績を持つ指揮官だ。(C)SOCCER DIGEST

[E-1選手権]日本 1-4 韓国/12月16日/味の素スタジアム

 日本に訪れた悪夢。しかし、韓国からすれば大きな手応えを得た一戦だった。
 
「日本、韓国の両チームがベストを尽くした良いゲーム」

 シン・テヨン監督は日韓の両者の健闘を称えたうえで、「この大会で優勝したことで、選手たちは自信を取り戻したと思う」と自らのチームに賛辞を送った。
 
 来年のロシア・ワールドカップ出場を決めている韓国だが、今年7月にシュテーリケ前監督が解任されるなど予選は大苦戦。U-20代表を率いていたシン・テヨン監督が就任し、苦しみながらも最終節で何とか突破を決めた。それでも、「10月は国内組主体のメンバーでヨーロッパ遠征に行き、サポーターをがっかりさせてしまった。でも、11月は結果が出て、選手たちの力量も上がってきた」という指揮官の言葉通り、予選後から徐々に復調。そして、今回のE-1選手権では安定感のある戦いぶりで優勝を掴んだ。
 
 この結果に安堵の表情を浮かべた指揮官だが、ひとつの苦い経験が生きていたと明かす。昨年1月に行なわれたU-23アジア選手権の決勝だ。リオ五輪を目指し、当時U-23韓国代表を率いていた指揮官は出場権を手中に収めてU-23日本代表との決勝戦に駒を進めた。しかし、そこでは0-2でリードしながら、後半に3点を奪われてまさかの逆転負け。ドーハの地で日本が歓喜に沸いた一方で、韓国は失意のどん底に突き落とされた。
 
【日本代表PHOTO】E-1選手権・第3戦の韓国戦。4失点の惨敗で優勝ならず…

 当時を振り返り、シン・テヨン監督は「ドーハでの逆転負けは私のキャリアに傷を付けたと思う」という言葉で悔しさを滲ませた。しかし、現在はその敗戦が「今思えば財産になったと感じている」と述べた。この日は前半早々に先制点を奪われながらも前半のうちに逆転。3-1となり2点リードは苦い記憶だったが、「リオ五輪予選の決勝は2-0で勝っていたところから2-3にひっくり返されてしまった。この経験があったので、勝っていてもどのようにプレーをするかを頭でシュミレーションするようになった。そのおかげで、最後まで落ち着いて冷静に試合を分析し、選手たちに指示を伝えることができた」という。
 
 そういう意味では昨年1月の敗北が、アジアの虎に大きなものをもたらしたと言える。この日の韓国の完勝は、日本とのライバル関係があったからこその結果だった。

取材・文●松尾祐希(サッカーダイジェストWEB編集部)
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