【ベガルタ戦記】渡邉晋の『日晋月歩』|最終戦は「積み上げ」への想いが割り切りを上回った結果…

2017年12月15日 渡邉 晋

自分たちの信念を割り切れなかった。

今季の最終戦では、シンプルにボールを前線に入れる戦い方に切り替えても良かったと今は思っている。写真:田中研治

 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第33回。テーマは「自分たちのサッカー」だ。今季のリーグ最終戦はアウェーで甲府と対戦。J1残留を懸けて戦う相手に対して、積み上げたサッカーで挑んだが……。

 
 相手の気迫や会場の雰囲気は「織り込み済み」の一方で、ある事柄が「想定外だった」とも渡邉監督は語る。敗戦を喫した理由とは? 1年をかけて積み上げてきたからこそ難しい「割り切り」について、試合内容とともに振り返ってもらった
 
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[J1リーグ34節]甲府 1-0 仙台/12月2日(土)/中銀スタ
 
 今季リーグ戦の最終戦の対戦相手は甲府。J1残留を懸けて向かってくる圧力や会場の雰囲気は戦前から織り込み済みで、難しくなるだろうと考えていた。ただ、ひとつだけ想定外だったのがピッチ状態だ。
 
 思った以上にデコボコでボールが走りにくかった。しかし、それは言い訳にならない。難しい試合となった最大の理由は、「自分たちの信念を割り切れなかった」こと。会見では「相手の圧力」という言い方をしたが、「割り切り」を「信念」が難しくした。シンプルにボールを前線に入れる戦い方に切り替えても良かったと今は思っている。
 
「最終戦で今まで積み上げてきた俺たちのサッカーにチャレンジしよう」という想いがあり、自分も選手たちをそうやって送り出した。割り切るつもりなどサラサラなく、結果的にはキレイに行き過ぎてしまった。
 
 振り返れば、4節の柏戦(0-1)でも日立柏サッカー場のグラウンドコンディションが悪く、割り切って前線にボールを運び、奥埜(博亮)のゴールで勝ち越した。31節のG大阪戦(1-1)も同様だ。雨でボールが走らないので、とにかく前線に放り込んでしまい、セカンドボールを拾うことを徹底した。そしてボールが走るようになってからは戦い方を変化させられた。
 
 今までは臨機応変な戦い方ができていたが、甲府戦の前半は「こういうサッカーをやってきたんだ」という気持ちが勝り、それを表現することに前掛かりになってしまった。
 
 32節の大宮戦(3-0)、33節の横浜戦(2-2)と素晴らしいパフォーマンスを披露できていたことも、その後押しになっていた。「もっとやれるんだ」との想いが、「状況に応じて割り切る」を上回った。

次ページ本気で神戸を得失点差で上回ろうと考えていた。

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